in the flight





秋祭。

木ノ葉の里でも、お祭りはあって。
暗部にいた頃は見回りで祭りを楽しむ事なんてなかったけど
今はこうやって、先輩と一緒に祭りに出かけている。


「祭りって何が楽しいんですかね」


暗部の頃から思っていた事をつい口走ってしまう。


「何がって、何?楽しくないの?」


相変わらず、けだるそうな話し方をする先輩。

「楽しくないですよ」

屋台で買った焼きとうもろこしを頬張りながら人混みに僕はもううんざりしている。
祭りに行こうって言い出したのは先輩で、僕はあまり乗り気じゃなかったけど
浴衣姿の先輩が見れるならいいかと思っていたのに先輩はいつもの忍服を着ていた。
こんなだったら、家にいたほうがずっとましだ。人が多すぎていちゃいちゃする場所だって無いし。


「せっかく俺から誘ったのに、そんなにつまらなさそうにしなくてもいいでしょ」

僕の不機嫌が先輩にうつったらしく先輩までむすっとした顔をする。
そういえば、先輩から誘ってくるなんてかなりめずらしい事だった。
だけど先輩だって、そんなに楽しそうにしてないじゃないですか。


「もう帰りませんか」
「ん〜…もうちょっと待って」

先輩がそう言って、スタスタ歩きだしたから僕ははぐれないように一生懸命歩く。
途中、知ってる連中ともすれ違ったけど皆楽しそうにしていたから、
人混みを切って歩く僕達には誰も気付かなかった。


「ほんと…何が楽しいんだ」


憎まれ口をぶつぶつ呟きながらも、器用に人混みの中を進んで行く先輩を
見失わないように歩くのに必死で。


そして、どんどん歩くにつれて、行く場所の見当はついてきた。


「やっぱ、ここでよかったかも」
「・・・なんなんですか」


かなり歩いて着いた所は、先輩の家だった。
部屋に入り、明かりもつけず、ベッドの傍にある窓を開けてベランダに腰を降ろした。


「そんな顔してないで、こっち来たら?」


先輩は柵に腕をかけ、頬杖をつき僕を見る。

外から聞こえてくる祭りの喧噪とは打って変わって部屋の中はとても静かだ。

僕は先輩に歩み寄り、柵に寄りかかって座る先輩の髪に触れる。
その髪が、外からの光に銀色の髪が照らされて、月の光のようにきらきら光っていた。


僕はこの不機嫌さを、先輩を抱いて紛らわせようかと思い、髪に触れていた指先を先輩の頬にやり、
口布をずらして顔を寄せて唇を合わせようとしたら、外から、ドーーン…と大きい音がした。


「…?」


目を開くと先輩の髪が、赤や黄色にきらきらと光っている。
後ろを振り返ると、里の火影岩の方向に大きな打ちあげ花火があがっていた。


「知らなかったでしょ?
今年は夏祭りの花火が雨続きで上げられなかったから、秋祭りであげる事になったんだって…」


先輩が、花火に目を奪われている僕に言った。

僕は振り返って、先輩の顔を見る。

花火の光に照らされて相変わらず先輩の髪が沢山の色に彩られていた。
僕は今度はそれに目を奪われる。


「…おかげでいいものが見れました。すごく、きれいです」


僕は先輩の髪に唇を落とす。秋祭りも花火も悪いもんじゃない。


     *   *