in the flight





先輩と並んで歩く。
僕と背はあまり変わらないのに目線が違うのは猫背のせい。

「これからどうしましょうか」

昼過ぎに暇を持て余しながら歩いていたけれど
ずっとこうやって歩いているのもなと思って聞いた。
こうやって1日、のんびりいられる日なんて滅多にないから
本当は家でくつろいでいたいのに、先輩が外で食事したいって言ったから
こうやって出てる訳なんだけど・・・その食事も済んだ事だし・・・。

「ん〜…そうだねぇ」

呑気にそう言う先輩は、イチャパラを読みながらずっと歩いている。
僕がいるのにお構いなしだ。

「僕の家来ます?」
「…そうねぇ」

いくら聞いたって、本を読みながらの気のない返事しか返ってこない。

「…先輩、僕の話、聞いてます?」
「ん〜…。…なんか言った?」

やっと本から顔を上げたかと思えば、僕の話は全然聞いていなかったらしい。

「僕の家に来ませんかって聞いたんです」
「あぁ、いいけど」

先輩はそう言って、僕の耳に顔を近付けた。
耳を澄まして聞いてみると、「今日はシないよ」だなんて言う。

「な…、どうしてですか?!せっかく久しぶ…」
久しぶりに先輩とできるって思ってたのにって言おうとしたら、
先輩に両手で口を思いきり塞がれてしまった。

「…馬鹿。その続き、ここで言ったら俺口聞かないからね」
「あ…」

でも、でもそんなのってあんまりだ。理由を知りたい。


      *   *


僕の家に入った先輩は、ごろっとソファを独り占めしてイチャパラをまた読み出した。
その行動が、余計に僕をイライラさせる。

「先輩。僕とするの、嫌なんですか?」

そう聞いたら、パタンと本を閉じて僕を見上げた。

「テンゾウは俺の体だけが好きなの?
 お前とヤるのは好きだけど、たまにはしない日があってもいいじゃない」

あ・・・。先輩にそう言われて、返す言葉が無かった。
ずっとここ最近は、お互い忙しくて会う度に抱き合ってた気がするから。

「こうやってダラダラするの、嫌?」

そう言って、寝転がりながら脇に立っている僕の手をぎゅっと掴んだ。
その表情は少し、不安そうで僕は心配になる。

「嫌じゃないです…けど」

僕はその手を握り返して、ソファの下に座り込んだ。
きっと今の僕は、引きつった顔をしているだろう。

「毎回突っ込まれてばっかじゃ不安になるって言ってんの」

先輩はそう言ってから、ふっと目元を緩めた。

「ま・・・、テンゾウがしたいって言うなら好きにしていいんだけど。
 求められると嬉しいから。でも、俺の気持ちもわかってよ」

そうだよな。僕もたまには恋人らしい事だってしたい。

「…ごめんなさい」

先輩の気持ちも考えないで、自分の事ばかり考えてた。

「ん、わかったんならいいよ」

先輩はそう言った後、掴んでいた僕の手を引いたから
僕は先輩の胸に飛び込んでしまった。

「きゅ、急に何を…」
「抱いてくれるんでしょ?」

呆れた。
今日はお預けも仕方ないなと思った所だったのに・・・
先輩の誘うような目を見て、僕は溜め息をつく。

「……。ハイ」

僕は結局、この人の手のひらの上で転がされているだけだ。

先輩の濡れたような唇にくちづけようと顔を近付けると
先輩に下から首を引き寄せられて、不意に唇が合わさった。
ほんとは抱いてほしかったんだろうけど、わざとあんな事言ったりして僕の事を試しているだけなんだ。

片手を伸ばして、先輩のモノに触れるとむくむくと膨らんでくる。
それをゆっくりと撫でると、唇から熱い溜め息が溢れて僕の髪をぎゅっと掴んで唇を離す。

「テンゾ、ちょっと待って」
「…なんですか?」
「お風呂でしよっか」
「はあ…」

僕はどこでも良かったんだけど、めずらしく先輩からの提案だったから、それもいいなと思った。

「じゃあ、湯を入れてきます」

そう言って立ち上がり、浴室に行くと先輩も一緒に付いて来た。

「まだ時間、かかりますよ」

浴室の蛇口をひねってから、振り向いて言うと僕の服に手をかけた。

「ん。待てない」

先輩はそう言って、僕の服を脱がし始める。
仕方なく僕も先輩の服を全部脱がした。
先輩の白い肩がきれいで、ドキドキする。

そういえば最近はこうやって、ゆっくりと先輩を見る事も無かった。
そんな余裕も無かったのかと自分に呆れ果てる。

先に浴室に入った先輩は、シャワーの栓をひねって
まだ湯が溜まりきっていないバスタブに入り、
頭からシャワーを浴びて、艶やかな目をしながら僕を見た。

それに誘われるように僕もバスタブに入ると、
ぎゅっと僕に抱き着いて腰に手を回してきた。
その白いその背中を撫でると、気持ち良さそうに体を反らせて
僕の耳を口に含み、甘噛みしながら舌を這わせる。
ぞっとする気持ち良さを感じながら僕は先輩のきれいな尻に手を伸ばした。
その穴に少し触れただけで、体をびくんと反応させて小さい溜め息が僕の耳にかかる。

僕は先輩を少しだけ引き離して、その潤った唇に自分の唇を合わせると同時に
唇が開いて僕の舌に先輩の熱い舌が絡んできた。
唾液とシャワーの湯が混ざりあい、ぬるぬるとした感触が気持ち良くて夢中で舌を絡めあった。

そして、もうすっかりと硬くなった僕のを先輩のものに擦り合わせると
先輩は僕の首にしがみついて、甘い吐息を漏らした。

尻をまさぐっていた指先を、先輩の穴に這わせてその淵をなぞると軽く身震いをさせる先輩。
もう片手で腰を支えながら、中指をその穴の中に滑り込ませた。

「んん…あ…」

先輩の小さい溜め息が、塞いでる唇から溢れ出した。
シャワーの湯のせいで簡単に侵入できたけれど、中はまだ広がっていない。
指を折り曲げて、ゆっくりと押し広げながら指の腹で内側をこすると、
溜め息が喘ぎ声に変わり、息苦しそうに唇を離した。

「ふぅっ・・・あぁっ・・・あ・・」

「先輩、かわいい」

ほんのりとピンクにそまった体を見て、そう思った。

「やっ…、かわいくなんかない」

そう答えながら、僕の肩に顔を押し付ける。
その顔を上から覗き見ると、目はとろとろになっていて頬は上気して赤くなっていた。
かわいいとしか言いようが無いんだけど・・・。

僕はもう柔らかくなった先輩の中に、指をもうひとつ侵入させた。

「あっああんっ・・・テンゾ・・・」

先輩の体に力が抜けて、がくんと腰が落ちそうになるのを受け止めながら
二本の指で掻き回して、先輩の気持ちいい所を刺激した。

「やっ…はあぁっ・・・気もちいい・・・」

先輩の体がどんどん熱くなってくる。
このままもう少し続けて、一度イかせてあげたいけどあまり長くしたらのぼせてしまう。

「先輩。もう挿れてもいいですか?」

一応確認。前に一度、イかせてあげないで突っ込んだ時に後で怒られたから。
そしたら、コクンと頷いて僕を見上げたその誘うような目と少し開いた唇に、理性を奪われそうになる。

シャワーの栓を閉めて、先輩を反対側に向け
浴室の壁に手を付かせると明るいせいできれいな体がよく見える。
その腰を両手でなぞりながら、挿れやすい高さに合わせて掴んだ。
もう赤く染まってプクリと膨らんでいるその穴に、
硬くなった僕のものをそっと当てがって、ゆっくりと挿し込んだ。
湯で濡れているせいで、いつも異常に卑猥な音を立てて穴の中に入っていく。

「ああ…あっ…」

先輩の背中が仰け反り、そのせいで腰が突き出されたから
僕は更に奥へと差し込ませた。

「やっ…あ…あ…」

ぎゅうぎゅうと締め付けてくる快感に、理性が飛んでしまう。

「しっかり立ってて下さい…」

そう言って、欲望のままに腰を打ち付けた。

「あ!あっやっ…テ、ンゾウ…!」

悲鳴のような先輩の喘ぐ声が浴室の中に響き渡る。
繋がっている所を見ると、ぐちゅぐちゅと音を立てながら僕のを受け入れていた。

「っ、やさしく…して…って、あ…」
「ごめんなさい。無理…です」
「やっ…、も、出そ…」

僕ももう我慢の限界で、先輩の合図で激しく突き上げて、
先輩の奥にたっぷりと注ぎ込む。

「あ…あ…」

僕が達してすぐ、先輩も達した。

湯の上に、先輩の出した精液が飛び散っている。

「先輩。そのまま、もうちょっと我慢してて下さい」

湯の中に先輩の腰を沈めて、指をもう一度差し込み
今流し込んだばかりの僕の精液を掻きだした。

「んっ…ちょっと待って…後でしてよ」

先輩が不満気に言うけど赤くぷくりと腫れ上がった穴から
白い液体が零れだす所は、何度見てもイイ。湯の中だと事後処理も楽だし。
いつの間にか、湯はバスタブいっぱいに溢れかえっていて二人分の精液が浮いている。
それを恥ずかしそうな目で見た先輩が湯の栓を抜いた。

「…早く抱き締めてよ」


ぐったりとした様子で僕を見る先輩は、体が真っ赤でのぼせているようだった。
さっとシャワーを浴びて、先輩を抱きしめると力なく僕に体を預けた。

「だっこして、ベッドまで連れてって」
「わかってますよ」

ちょっと憎まれ口なのがものすごく可愛くて、なんでもしてあげたいと思ってしまう。
体を拭いて、先輩をベッドまでだっこして運んだ。

「…あれだけ言った後だったんだから、もっと優しくしてよね」

ぶすっとした顔をして言う先輩に水を渡しながら
これから二回戦をやろうとしてるなんて、とてもじゃないけど言えないな…と思いつつも
結局また求めてしまうんだろうななんて思いながら先輩の隣に潜り込んだ。

「でも、気持ち良かった」

先輩はそう言ってほかほかした体を僕に寄せて、かわいいキスをくれた。
本当は毎日こうやって抱き合えるのなら、こんなに無茶したりしないんだけどな。

「…じゃ、もう一回しましょうか」
「優しくしてって言ったでしょ!」
「や、優しくシますから…!」
「その意味じゃないって…ちょ…っ」


      *   *