in the flight




ivory (2)







「・・・っ」

開いた唇をテンゾウの舌が割り込んできて、俺の舌を絡め取る。
角度を変えて段々と深くなるキスに夢中になる。
腰が抜けるかと思うくらい気持ちがよくて、テンゾウにしがみついた。

お互いにもどかしいものを擦り合わせあう。ぬるぬると滑る感触が気持ち良い。
段々と苦しくなってきて、喘ぐように何度も息を吸い込んでいると唇が解放された。
テンゾウはシャワーの栓をひねり、体の泡を洗い流してくれたかと思ったら
その場に膝をついて俺のものにキスをした。

「・・・すみません。やっぱり余裕無いです」

申し訳なさそうな顔で見上げるテンゾウがかわいくて、濡れた茶色の猫毛をくしゃりと撫でた。
テンゾウはいつもそう言うけれど、酷くされた事なんか一度も無いし。
焦れったくなるほど優しくされて余裕が無くなるのは、むしろ俺の方だ。

硬く張り詰めたものを、ぱくりと咥えられる。
テンゾウの口内はとても熱く、這い回る舌のざらざらとした感触が気持ちよくて目を閉じた。
テンゾウがゆっくりと頭を動かすと、卑猥な水音が聞こえてくる。
唇で締め付けられ何度も擦られて頭の中が真っ白になっていく。

「・・・っ・・・ん」

口淫されるのは慣れないというか、そんな事テンゾウにさせたくないんだけど。
だけど嫌だって言ったって絶対に止めてくれないだろうし。

「テンゾウ、もういい・・・っ」

もう出そうだからとテンゾウの頭を引き離そうとしたけれど、その手に上手く力が入らない。
反対に強く吸い上げられ、テンゾウの口腔に欲を吐き出してしまった。
乱れた息を整えようとしながらテンゾウを見ると、ごくりと俺の出したものを飲み干した所だった。

「ごめん・・・」

罪悪感を感じて思わず謝ると、テンゾウは首を横に振って立ち上がった。

「僕がしたいだけなんで、気にしないでください。先輩、せっかくですし湯に浸かりませんか?風邪引いちゃいます」
「ん・・・」

でも、これでお終いって訳じゃないよね?
テンゾウは俺の手を取って浴槽の中に入るから、俺も一緒に入ってテンゾウの胸に背中を預けた。
ちょうどいい湯加減と檜のいい匂いに、ほんの少しだけ気持ちが落ち着く。

「テンゾウも背中流してあげようと思ってたのに」

そう言ったら後ろから抱きしめられて、項にキスをされた。
舌でそっとなぞるように舐められると体がビクンと反応してしまう。

「・・・、っ」
「それは後でお願いしますね」

チュッと音を立てながらきつく吸い付かれ、微かな甘い痛みが走る。
テンゾウの手が腰の方にするすると伸びていき後ろの秘部を探り当てた。

「っ・・・ちょ、待っ・・・」

こんな湯船の中でなんてと逃げようとしたけれど、
強く抱きしめられているせいで逆に引き戻されてしまった。
入り口を確かめるように触れていた指先が、お湯と共に入り込んでくる。

「は・・・、あ・・・」

何とも言い難い感覚に身を捩らせると更に深く指が挿しこまれてしまった。
普段は潤滑剤を使って慣らしてもらっているせいもあって引き攣るような痛みが走り体が震える。

「・・・痛いですか?」
「平気・・・それより、お湯が・・・」

指を動かされる度に温かい湯が入ってくる方が落ち着かない。

「気持ち悪い?」
「いや・・・変な感じ」

気持ち悪い訳じゃ無いけれど、気持ちいい訳でも無い。
ただ体から、どんどん力が抜けていってしまって目を閉じたままテンゾウに頭を預けた。
すると指をもう一本増やされて、内側にあるらしいある部分に触れてくる。
それだけで体が大きく震え、頭が真っ白になった。

「あっ・・・ぁ・・・」

そこを刺激されると、訳が分からなくなる位に気持ち良くなってしまう。
何度か執拗にそこばかり攻められて意識を飛ばした事もある位に。
だから、触れられただけで必要以上に反応してしまう。

「先輩。僕、今日はもうそろそろ限界なんですが・・・」

挿れてもいいですかって耳元で囁かれると、体が一層熱くなった。
息が乱れて返事が出来ず、代わりに頷いたら指を抜かれて腰を持ち上げられると
入り口にテンゾウの硬く膨張したものが押しつけられたかと思うと
そのまま腰を引き下ろされ、ぬるりと温かく硬いモノが入ってきた。
自分の体重の重みで体の奥まで貫かれる。

「・・・っ」
「ごめんなさい」

まさか一気に挿れられるとは思っていなかったから息を呑む。
耳元で聞こえたテンゾウの声は、いつになく余裕が無くて胸が痛んだ。
好きにしていいと言ってやりたいけれど、すぐに下から腰を打ち付けられて
俺もそれどころじゃ無くなってしまう。
抉るように突き上げられ、抑えていた声が溢れてしまう。

いつのまにか達したばかりのモノが熱い芯を持っていて、今にも吐き出してしまいそうだ。
テンゾウの荒い息と、たまに漏れる呻き声を耳元で聞いている内に視界が霞む。

「すみません、もう・・・っ」
「・・・ん、俺もイキそ・・・」

俺がそう答えるとテンゾウの腰の動きが激しくなった。
後ろからはち切れそうな程に膨れあがっている昂ぶりを強く握られ
上下に擦られると頭が真っ白になってしまった。
体の深い部分に、熱い液体が流れ込んでくるのを感じながら
ぐったりとした体をテンゾウに預ける。

抱きしめられながら目を閉じれば、段々と意識が遠のいていく。
長い間湯に浸かって逆上せてしまったのかもしれない。
意識を引き戻そうと思えば簡単にできるけれど、なんだかとても心地が良い。
そのまま満たされた気分のまま、俺は意識を手放した。




気が付いたらベッドの上にいた。隣にはテンゾウがいて、本を読んでいる。
あれから体を拭いてくれて寝間着を着せて運んでくれたのかと思ったら
ちょっとだけ悪いなと思った。
テンゾウは俺が目覚めた事に気が付いて、顔を覗き込んでくる。

「気が付きましたか」
「ん・・・ごめんね」
「いえ。僕のこと頼ってくれて嬉しいです」

頼ってるっていうか、甘えてるんだけどね。
わざわざ言うのも気恥ずかしいから言わないけれど、ついテンゾウには甘えてしまう。
そういえば今何時なんだろう。夕飯を作って待っててくれたって事は、テンゾウもまだ食べてないはず。

「ご飯冷めちゃったよね」
「お腹空きました?」
「ううん、全然」
「僕もです」

お腹は減っているような気もするけれど、それよりも体中がとてもだるくて動きたくない。

「先輩を頂いたんで、満足です」
「・・・そ」
「それに、一番楽しみにしていたお返しも頂いたので」
「まだ言うつもりじゃなかったんだけどね・・・」

ちゃんと好きって言おうと思っていたのに、ぽろりと言ってしまった事が恥ずかしい。

「じゃあ、もう一回聞きたいです」
「そんなに何回も言わなくていいでしょ」

ニコニコとした顔で見つめられると余計に恥ずかしくなって視線を逸らすと
頬をそっと撫でられて、視線をまたすぐに戻してしまった。
テンゾウの大きな真っ黒の瞳は見ていると吸い込まれそうになってしまう。

「先輩」
「・・・何」
「好きです」

突然優しい声と表情であらたまって言われると胸が甘く痺れる。
赤くなった顔を見られたくなくてベッドから抜けだそうとしたら
後ろから腕が伸びてきて腰に絡みつき、引き止められた。

「お・・・お腹すいた」
「さっき空いてないって言ったじゃないですか」
「・・・うるさいっ」

結局またベッドに引き戻され、テンゾウに組み敷かれた。
真っ直ぐに見つめられると心臓が跳ね上がって体が熱くなってしまう。
ちょっとこれでは先輩としての威厳が・・・なんて思ったりしたけれど、
好きになってしまったのだから仕方ないというか。
ゆっくりとテンゾウの顔が近づいてくる。

唇が重なる前に、やっぱりちゃんと言っておこう。
いや、伝えたくなってしまったと言ったほうが良いのかも知れない。
一緒にいるだけで愛おしい気持ちが溢れすぎて、伝えないと胸が苦しくなってしまうから。
でも照れくさいから、やっぱり小声で呟くように。


「好きだよ」



  おしまい






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