in the flight




告白

    (一話完結)





任務報告に行っている先輩と待ち合わせをしていたんだけど
一向にやってくる気配がない。

いくら遅刻常習犯とはいえ、報告に行っただけなのだから
すぐに出てきてもいいのに・・・。
そう思いながら待機所周辺をウロウロしていると、先に見える
建物の裏に、先輩が僕の知らない人と一緒にいる所を見つけた。

その人は制規の木ノ葉の忍服を来ていて、先輩よりも背が少し
高くてがっちりしてて、・・・あぁでも、ここからだとよく見えないし
何を話しているのかよくわからない。

でもあんな所で会話しているぐらいなんだから、聞かれたくない
話でもしているんだろう。

僕はなんだか胸がしめつけられる思いがして、先輩との
待ち合わせの場所へと戻った。

・・・。何の話、してるんだろう?任務の話でもしているんだろうか。



しばらくして、先輩が僕の所へとやってきた。

「ごめ〜んね。待った?それよりテンゾウ、覗き見はよくないよ」

あ・・・バレてたんだ。
でも先輩から言うって事は、特に後ろめたい話をしていた訳じゃ
ないって事か。

「すみません、ちょっと遅いなと思いまして。
 で、何の話をされてたんですか」

「ん〜・・・、ま、あれだ。告白ってやつ」

はぁ・・・。またか、と僕は思って溜め息をついた。

「なになに、心配?」

「心配なんかしてませんよ」

茶化したように言う先輩を見ていたら、先輩にその気が無い事なんて
すぐに分かるから僕はそう答えた。だってこれでもう何人目ですか?
付き合い始めた頃は、いちいち心配になったけど、もう今となっては
日常茶飯事で、そんなに気にならなんですよ。そんなに。

「余裕だね〜、テンゾウ」

無邪気に笑いながら、早く行こうって僕の腕を取った。

「・・・先輩。里の中では、駄目ですよ」

そう言って先輩の手を離して、歩き始めた。

「はいはい」


        *   *


僕の家に向けて歩く途中、小さい公園の側を通り抜ける。
もう陽がくれて、公園で遊ぶ子供達の姿はなかった。

「ねぇテンゾウ、懐かしいよね。ここ」

そう言って先輩が、砂場の脇に面したベンチに座って
僕を見上げて言った。

「そうですね・・・」

その隣に僕が座って、思い出す。
ちょうど季節も今ぐらいの肌寒い季節。
お互い好きなのはなんとなく分かっていたけど、
どちらも言い出せずに微妙な関係が続いていて。

ふと立ち寄ったこの公園の、このベンチに座った時に
先輩が寒いと言って、僕の肩に寄り添ってきて僕はその肩を抱きしめた。
その後にどちらからともなく、キスをして、散々お互いの唇を
貪り合ったその後に、僕が先輩に「好きです」って伝えたんだ。

ここにこうやって並んでいると、あの時の甘酸っぱい気持ちが
よみがえってきて胸がくすぐったい。

先輩が、あの時と同じように僕の肩に寄り添ってきたから
その肩をぎゅっと抱きしめた。
あの時は、どうしても言葉が出て来なくて
言葉よりも先に行動でお互いの気持ちを確かめた僕達だったけど
今だったらすんなりと、好きだって言える。

「あの時よりもっと、先輩が好きですから」

そう言うと、先輩は顔を上げて嬉しそうに微笑んだ。
そしてその後に、あの時よりももっと甘いキスをしあった。



           *  完  *