in the flight





くまさんのきもち 13





 昼間に淹れようと思って摘んでいたミントをお茶にして飲んでいたら、テンゾウからの電話が鳴った。
「体調どうですか?」
「うん、大丈夫だよ。今から行ってもいい?」
「はい。じゃあ玄関で待ってますね」
 少しだけの会話なのに電話を切ってからもドキドキしている。
 急いで料理を詰めた容器を手提げに入れて、すぐに家を出た。歩いて数分もかからない距離なのに道のりが長く感じてしまう。
 ひとつ角を曲がれば接骨院が見えるのだけど、その玄関先に人影が見えた。外で待ってくれていたのかと小走りで向かうと、すぐにテンゾウが荷物を持ってくれた。
「待ちきれなくて外に出てきちゃいました」
 照れたようにテンゾウは言って、ガラガラと玄関の扉を開いて俺を招き入れてくれた。
「ご飯まだでしょ?持ってきたから一緒に食べよう」
「本当ですか?ずっとカカシさんのご飯が食べたかったんですよ」
 今までそんなに大した物は作っていないのに、テンゾウはいつも喜んでくれる。さっそく部屋に上がって準備しようとするとテンゾウに断られてしまった。
「今日は座ってて下さい、これ位なら僕でもできますから」
 言われた通り大人しく座っていると、温かいお茶を出してくれた。
「今日はお酒はやめておきましょうね。僕も最近は仕事がきつくなるので飲んでないんです」
「忙しいのはいつまで続くの?」
「分からないです、予約が一ヶ月先まで埋まっていて」
「このままだと本当に体壊すよ。一人でやってるんだから無理しちゃ駄目だって。俺が困る」
「・・・そうですね。カカシさんがそう言うのなら、これからは今まで通りの時間内だけにします」
 という事は、まだあと一ヶ月は忙しいという事なのか。
「あと出張マッサージも。どうにかしてもらえないの?」
「その件ならもう大丈夫です。最低でも月に一度だけにしてもらいました」
 それでも月に一度は休日が潰れてしまうという事だよね。その分、テンゾウに会えるかもしれない時間が減ってしまうのだけど・・・・・・仕事なんだから仕方がないと思うしかない。
「カカシさんに会える時間を少しでも増やしたいので。数週間だけでしたがカカシさんに会いたくて仕方が無かったです。クマさんがいて良かった」
「クマさん?」
「誕生日プレゼントのクマさんです。毎日ずっと一緒に寝てるんですよ」
 テディベアの事か。そういえばサイが、そのクマさんの事を俺に教えてくれたけど、別の誰かを身代わりにしてると思っていたんだよなぁ。まさか俺だったなんて。
「サイに聞いた。・・・・・・お前がぬいぐるみに向かって何か話してるのを見たって。あとクマさんの気持ちが分からないとかなんとか」
 するとテンゾウは思いきり顔を赤くして両手で顔を覆った。
「それ、忘れてもらえると嬉しいのですが・・・・・・」
「もしかして、ぬいぐるみを俺だと思って話しかけてた・・・・・・とか?」
「・・・・・・ハイ」
 消え入るような声でテンゾウは答えて溜め息を吐いた。それを聞いて俺は少しだけホッとした。ずっとその事で勘違いしていたから。
「別の人の身代わりにしているんだと思ってた」
「そういえばカカシさん前に言ってましたね。まさかそんな事考えてるなんて思ってもみなかったです、僕は割とあからさまな位にカカシさんに接していたつもりだったんで」
 俺はどうだったかなと首を傾げた。ひとつひとつを思い出すと勘違いしそうにはなる事ばかりかもしれないけれど、違うだろうと自分に言い聞かせ続けていたから。
「ハッキリ言ってくれないと分からない」
「まだ言ってませんよね、僕」
 テンゾウはそう言って改まった様子で俺に向き直ったから俺も余計に緊張してしまう。
「カカシさんの事が好きです。多分、初めて会った時から」
「俺も多分・・・・・・初めて会った時に好きになってた」
 あのマッサージに心も体も全部溶けてしまったんだと思う。なんとなく照れくさくなって視線を逸らすと、後頭部を引き寄せられてテンゾウにキスをされた。
 優しくて甘いキスに体中が熱くなってしまう。
 何度も啄むように重ね合っていくうちに、唇を重ねている時間が長くなっていく。ぬるりとした舌が催促するように唇を舐めるから口を開いて受け入れると、すぐに舌を絡め取られてしまった。
「・・・・・・ん」
 口内をくまなく這い回る舌の感触を、ただ拾い上げる事しかできない。突然の深いキスに頭がぼうっと逆上せてしまっている。キスだけなのに、もう体は溶けてしまいそうだった。
 背中を支えていた手が服の中に潜りこんできて直接肌に触れてくる。マッサージする時とは違う手の動きにゾクゾクして、テンゾウの背中に腕を回してしがみつく。
「・・・っ、テンゾ」
 息苦しくなって唇を離すと、すぐに今度は項に唇を落とされた。つつ、と舌を這わせられるだけで体が震え溜め息が漏れてしまう。
「カカシさんが欲しい」
 耳元で低く艶のある声で囁かれると、頷く事しかできなかった。
 テンゾウはそのまま俺を畳の上に押し倒して見つめてくる。初めて見たテンゾウの欲情した男の目に心臓が跳ね上がった。
「電気、消してほしい」
「嫌ですか?」
「・・・恥ずかしいから」
 いくらなんでも明るすぎる。
「分かりました、後で消します」
「えっ、後でって、それいつ・・・っ」
 そのまま唇を塞がれて、俺の頼みは聞いてくれなかった。
 テンゾウの手が服の裾を上まで捲り上げ、胸の先端を指で弄り始めた。じわじわと快感の波が押し寄せてきて堪らず体を捩らせた。
「・・・んっ、んぅ・・・」
 唇を離してもらえず、上手く息継ぎが出来なくなってくる。
 指の腹で先端の粒を転がすだけだったのに、きゅっと抓られるとそこから甘い痛みが走った。
「ぁっ・・・」
「ここ、感じるんですか?」
 唇を離してテンゾウは意地悪そうな顔を浮かべながら言った。もうすっかりコリコリになったそこを、爪でひっかくように何度も弾かれる度に甘ったるい声が零れた。
「お前がそうさせてるんでしょ・・・っ」
「そうですね。・・・嬉しいです」
 テンゾウはそう言って頭の位置を少し下げ、俺の胸元に顔を近付けた。
 熱い濡れた舌が先端の粒を転がすように動かされ、その刺激に思わずテンゾウの頭を強く掴んでしまう。
「んっ・・・ぁっ・・・」
 すると今度は軽く歯を立てられ、痺れるような感覚が体中に走る。痛いのか気持ちいいのかどちらとも分からない感覚。
「や、やめ・・・、ッ」
「痛いですか?でも体は感じてるようですが」
 そう言って噛まれて敏感になったそこを舌でなぞるように舐め、唇で挟み吸い上げてくる。泣きたくなる位の快感に少し怖くなってしまった。まだ乳首しか弄られていないのに・・・。

 ようやくそこを弄られる事から解放され、乱された息を整えているとテンゾウの手が下半身に伸びていく。
 ズボンを降ろされ下着に手をかけようとした所で、俺はその手を抑えて止めさせた。
「電気、消してくれないの・・・?」
 後で、と言っていたけれど、もうそろそろ消してくれたって良いだろう。
「もう少し待って下さい。・・・カカシさんの事、全部知りたいんです」
 ニッコリと微笑まれると何も言えなくなってしまう。
 下着の上からもう硬くなった熱棒を擦られ、俺は抑えていた手を離した。
「あんまり見ないでよ」
「はい。そうします」
 テンゾウはそう答えたのに、俺の下着を降ろして現れた熱棒をじっと見つめている。
「見るなって言ったでしょ」
「どうしてです?・・・きれいな色ですね」
 その言葉に思わず赤面していると、その先端をぺろりと舌で舐められた。
「ちょ、舐めなくていい・・・!」
「したいんです。良いでしょう?」
 そう言ってテンゾウは先走りが零れ落ちている先端からずぷぷと水音を立て、奥まで咥え込んだ。
 熱い口内に包み込まれた熱棒は更に硬度を増して、ドクドクと強く脈を打ち始めている。
「ん・・・・・・、気持ちい・・・」
 目を閉じて溜め息混じりに言うと、ゆっくり上下に頭を動かされた。
 熱い手が俺の足を横に大きく開かせ、何度も太股を撫でている。うっすらと目を開いて見てみると、俺のを咥えているテンゾウと目が合ってしまった。
 部屋が明るいせいで何をしているか丸見えで、恥ずかしいから目を逸らしたいのに出来なかった。感じている俺の顔をテンゾウが欲情した目で見ている。
「・・・テンゾ、イキたい・・・ッ」
 するとテンゾウは一層強く唇で締め付け激しく頭を動かし始めると、簡単に絶頂へと登り詰めていく。
 口内で出してしまうと手を伸ばし、テンゾウを離そうとしたのだけれど逆にその手を掴まれてしまった。
「あ、あぁ・・・、ッ」
 一瞬目の前が真っ白になって何が起きたか分からなかった。けれどテンゾウがちゅっと俺のを吸い上げているのを見て、すぐに我に返る。
「の、飲んだの?」
「ハイ。美味しかったです」
 濡れた唇を指で拭いながら、テンゾウはニッコリと微笑んだ。それを見て俺はいたたまれなくなり視線を泳がす。
 テンゾウはその間に、すぐ後ろの棚から何かを取り出してきた。
「それ何?」
「オイルです。慣らさないといけないでしょう?」
 言いながらテンゾウは瓶の蓋を開け、手の平にトロリとしたそのオイルをたっぷりと垂らした。
「待って・・・」
 してもらってばかりで俺はテンゾウに何もしていないと起き上がろうとしたら、テンゾウに肩を押さえられてしまった。
「今度お願いします。今日は何もしなくて良いですから」
 諭すように言われ、俺は仕方無く頷いた。
 トロリとしたオイルをテンゾウは後ろの窄まりに塗り広げていく。ぞくりとする感触に体が反応して小さく震えると、テンゾウはその手を止める。
「気持ち悪かったら言って下さい」
「ん・・・、大丈夫だから続けて」
 入り口をなぞるだけだった指が内側に入り込んでくる。無理に奥へと押し込もうとせず、ゆっくりと馴染ませるように押し込まれる感覚に息を吐いて体の力を抜く。
 テンゾウの指は内壁を押したり擦ったり、探るような動きをしている。
 整体師という仕事柄そういう勘があるのか俺の気持ち良い所ばかり刺激してくるから、最初は少し違和感があった筈なのにいつの間にか快感が押し寄せてきていた。
「ぁっ・・・」
 解されて柔らかくなったそこにもう一本指が増やされる。体内でくにくにと動かされて思わず体が大きく捩らせてしまった。
「気持ち良いですか?」
「んっ、気持ち良い・・・っ」
 テンゾウは俺の言葉に満足したのか内壁をさっきより強く擦ってくる。体の内側からどんどん体中が熱くなってきて息も乱れてしまい、ぎゅっとテンゾウの肩を掴んだ。
「もっと奥の方かな・・・」
 テンゾウは言いながら指の腹で内壁を探り、しばらくしてそこにあるしこりを見つけた。
 そこに触れられると例えようのない強い快感が押し寄せてきて、思わず目を見開いてしまった。
「あっ、そこは駄目・・・ッ」
 頭を振って何度も訴えてみるけれど、テンゾウは執拗に同じ所ばかりを責めてくる。絶頂が延々と続いているような感覚に耐えきれず涙がこぼれ落ちてしまう。
「ああ・・・・・・、テンゾ・・・、んぅッ」
 終わる事のない快感に意識が飛んでしまいそうになった時、ようやく指が引き抜かれた。
 ホッと安心して息を吐きながら瞼を開くと、上から覆い被さるようにテンゾウに抱きしめられた。
「好きです、カカシさん」
 その言葉に応える変わりに背中に腕を回すと、後ろの窄まりに硬くて熱い塊が押し当てられた。
「・・・っ!」
 クチと音と立てながら体内にその大きな塊が、ゆっくりと挿入ってくる。そのあまりにもの質量に俺は思わず固まってしまった。
「む、無理・・・っ」
「力を抜いて下さい、さっきみたいに」
 そんな事を言われたって指とは比べものにならないくらいの圧迫感だ。改めて無理だと頭を振ると体を起こして俺の顔を覗き込み、唇を重ねてきた。優しくて甘い濃厚なキスに、頭がぼんやりとする。
 テンゾウのキスが上手いのか、それとも単に好きな相手とキスをしているからか分からないけれど、次第に体から力が抜けていく。
 それを見計らってか、一気にテンゾウは腰を奥まで押し進めてきた。
「あっ・・・」
「ごめんなさい。痛くなかったですか?」
 痛くはないけれど、あまりにもの質量に息が詰まりそうだった。
 俺の中でドクドクと脈を打つテンゾウの熱は火傷するんじゃないかと思う程に熱くって、何もしなくてもこのまま溶けてしまいそうだと思った。
「動かしていいですか?・・・カカシさんの中、凄く気持ち良い」
 溜め息混じりにそう言って、テンゾウはゆっくり腰を動かし始めた。
「んっ、や、ぁあ・・・ッ」
 ギリギリまで引き抜かれた熱棒が内壁を強く擦りあげる。その度に出したくもない乱れた声が溢れ出してしまう。
「そんなに締め付けないで下さい。我慢できなくなる・・・」
 余裕のない声でテンゾウは言ったけれど、それでも俺よりは余裕があるように思えた。
「そんな事言ったって、お前がっ、動かすから・・・・・・ッ」
 腰を引く度に、内壁がテンゾウの熱に絡みついているのが自分でも分かる。体が勝手に反応しているのであって、わざとやってる訳じゃない。
「無意識に、ですか」
 テンゾウは参りましたと苦笑いをしてから、ぐっと俺の足を高く持ち上げた。
「やっ、あ・・・っ」
 腰が浮いたせいでさっきよりも深くテンゾウの熱が突き刺さるようになって、思わず目を瞑った。すると性器が擦れる音と肌が打ち付けられる音を余計に意識してしまって、恥ずかしくて堪らなくなる。
 更に足を押されて体を折り曲げるような体勢にされた。
「カカシさん、見えますか」
 テンゾウの言葉に目を開いて見てみると、繋がっている部分が丸見えになっていた。
「・・・ッ!」
 羞恥に顔を背けると、テンゾウがギチギチに広がった入り口を指でなぞった。
「分かりますか?こんなに広げて僕のを咥え込んでる」
「いちいち言わなくていい、変態!」
「カカシさんにそう言われたら何か嬉しいです」
 楽しそうに言って、テンゾウはまた腰を動かし始めた。
 その熱が内壁を擦り上げる度に高みへと追いやられる。ふとテンゾウの顔を見上げれば、さっきの楽しそうな声とは裏腹に切ない表情を浮かべていた。吐く息は荒く、時折呻き声も漏らしていた。
 こうやって体を重ねているのだから当たり前だけど、テンゾウも感じているのかと思ったら余計に体が熱くなった。
 俺が見つめている事に気付き、テンゾウは俺の足を降ろして上から覆い被さってきた。
「そんなに見られると我慢できなくなります」
「我慢なんか、しなくていいでしょ・・・」
 その背中に腕を回して力を込めると、一層強く腰を打ち付けてくる。
「あっ、は、あぁ・・・ッ」
 気が付けばさっき達したばかりの熱が、もう爆発してしまいそうな状態になっていた。
「んっ、あ・・・・・・、出る・・・ッ」
「・・・・・・くっ」
 そしてあっという間に俺は欲望を吐き出してしまった。
 それと同時にテンゾウの熱が俺の体内でドクンと大きく弾け、温かい液体がじわじわと広がっていく。
 繋がったままお互い体の力を抜き、しばらく抱きしめ合っていた。
 まだ頭はぼんやりふわふわとした感覚のまま、体のあちこちに残っている甘い余韻に浸る。
「・・・ごめんなさい、今日倒れたばかりなのに無理させてしまいました」
 耳元でぽつりとテンゾウが謝った。
 確かに病み上がりには少し激しすぎたけれど、そんな事よりもテンゾウと体を繋げられた事の方が嬉しかった。
「明日仕事だよね・・・?」
「はい。でも寝て下さってても構いませんから」
 そう言ってテンゾウは体を起こし俺の顔を覗き込んで、額にかかった前髪を横に撫でつけた。
「悪いけど、そうさせてもらおうかな。ちょっと朝早く起きれる自信がない」
「せめてベッドの上ですべきでしたね。背中、痛くないですか?」
「今はわかんない、体がふわふわしてて」
 まるで夢の中にいるような気分だった。
 このまま寝てしまったらテンゾウが後で大変だと分かってはいても、体は思うように動いてくれない。
「もっと早くに言えば良かったです。・・・カカシさんは僕の事、そういう風に見てくれてないと思っていましたから」
「俺はいつ気付かれるか心配してた位なんだけどなぁ」
「カカシさんの家に泊まった時に一緒に寝たいって言ったのも、実はちょっと下心がありました。今だから話せますけど」
 苦笑いをしながらテンゾウは言う。
「お前ねぇ・・・。俺、一人で考え込んで大変だったんだぞ。それならいっそ何かしてくれたら良かったのに」
「朝、寝ぼけたフリして抱きつく位が精一杯でした」
「ちょ、あれもワザとだったの?」
 信じられない、俺がどれだけ悩んだと思っているんだか。
「ごめんなさい。でも楽しかったです」
「そうだな・・・。俺も楽しかったよ。仕事よりも大事な人ができるなんて思ってもみなかったし」
「僕は昔のカカシさんを知らないですが、徹夜を何日も続けるのはやめてほしい所ですね。今日みたいな事があると心配です」
「人の事言えないでしょ。お前みたいにいつも元気な奴のほうが、いきなり倒れたりするんだからね」
 無理しないようにって始めたのが今の接骨院だって言ってたのに、無理しまくってるじゃない。
 それに頑張るのは良い事だけど、その分俺と会う時間だって減る訳だし。
「はい。僕も気を付けます」
 そう言ってテンゾウは体を起こそうとする。だけど俺はもう少しこうしていたいから背中に腕をもう一度回して引き止めた。
「カカシさん」
「ん?」
 テンゾウは少し困ったような顔で俺の顔を覗き込んでくる。
「カカシさんの中に入ったままでいると、またしたくなっちゃいました」
「え」
 そこに意識を向けると、俺の中に入ったままだったモノがむくむくと大きくなっていってるのが分かった。
「嘘・・・。お前疲れてるんじゃなかったの」
「それとこれとは別です」
 そう言ってテンゾウは濃厚なキスをしてくる。
 深く口内を掻き回されるだけですぐにそういう気分になってしまった自分に呆れつつも、舌を絡め返す。
「ん、ふ・・・うっ」
 すっかり熱を持ち直した塊がじっと動かない事にもどかしさを感じ、自分から腰を揺らしてしまう。
 それに気付いたテンゾウは唇を離して俺の耳に歯を立てる。
「どうしてほしいか教えてください」
 甘い声で囁かれ、顔が熱くなってしまう。俺はテンゾウの首もとに顔を押し付け、小声で返事をした。
「・・・後ろからして」
 すると俺の顔を見て少し目を丸くさせたけど、すぐにそれは欲情の色に変わった。
「わかりました」
 ずるりと突き刺さっていた楔が抜かれ、うつ伏せにさせられた。腰を持ち上げると足を大きく広げられ、喪失感で疼く窄まりに勢いよく打ち込まれた。
「ああっ・・・ッ」
 腰を強く掴まれ、肌と肌がぶつかる音が聞こえる程激しくテンゾウは腰を穿ってくる。
「あっ、は・・・、ああぁ・・・っ」
 さっきとはまた違う場所を強く擦られ、そこから生み出される快感にただ喘ぐ事しかできない。
「こっちもして欲しいですよね」
 テンゾウはそう言って俺の硬くなったモノを片手で包み込み、扱きはじめた。
「やっ、ああっ・・・」
 そんな事をされたらまたイッてしまうのにと思うけど、やめさせる事はできなかった。体は何度も快感を求めてしまう。
 俺の熱はテンゾウの手の中でどんどん膨らんで、もうすぐにでもまた達してしまいそうな状態だった。
「イキそうですか・・・?」
「んっ、も・・・イク・・・、ッ」
 欲望が爆ぜた瞬間目の前が真っ白になって、くたりと体が崩れ落ちてしまう。
 そして体の奥で熱いものが放たれるのを感じながら、俺はそのまま意識を手放してしまった。


「ん・・・・・・」
 体が鉛のように重くて目が覚めた。
 テンゾウと抱き合って意識を飛ばして、それからの記憶が無い。という事はあれからずっと眠っていたのだろうか。
 気が付けば布団の中にいて、ちゃんと服も着せてもらっている。体もあれだけ抱き合った後だというのにスッキリとしているのは、テンゾウが拭いてくれたのかもしれない。
 隣からは静かな寝息が聞こえてくる。顔を向けると、テンゾウが気持ちよさそうな顔で眠っていた。ぐっすり眠っているようで起きる気配は無い。
 体はこれ以上にない位に重くてだるいけど、それと同時にまだふわふわと余韻が残っていてテンゾウの体温が恋しいと思ってしまった。
 テンゾウの方に寝返りをうって腕を伸ばそうとすると、俺とテンゾウの間に何か障害物がある事に気が付いた。何かと思って見てみると、俺があげたテディベアが置かれていたのだ。
 そういえば毎日一緒に寝てるとか言ってたっけ。
 俺の代わりだとか恥ずかしい事言ってたけど、今は俺がいるんだから置かなくても良いのに。
 そう思いながらも大事にしてもらえている事がやっぱり嬉しくて、俺はぬいぐるみごとテンゾウを抱きしめる。これからは、このテディベアだけに見せていたテンゾウの知らない部分を俺にも見せてほしい。そして同じくらい毎日一緒にいられたらいいのに。
そんな事を思いながら満たされた気持ちのまま、俺は眠りについた。


おしまい







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