in the flight




アナタの笑顔

     (一話完結)





カカシ先輩は感情に任せて怒ったりはしないし、基本は穏やかな人だと思っていた。
けどそれは付き合うようになる前までの話。
その頃は、にこやかに笑いながらも少しも隙を見せない所が怖いと思っていた。
心の中ではどう思っているんだろうって。

付き合うようになってからの先輩は、ちょっとした事ですぐに怒るし
嬉しい時は心の底からよく笑うし、隙だらけだ。
付き合う前に比べたらまるで別人の、僕にとっては、すごくかわいい人。

思っていることがすぐに顔に出るから、悲しい顔をされた時には
どうしたらいいのか分からなくなる。

今だって、僕が別の班で長期任務が決まったのを知って
「そうなんだ」と、言葉では何でもないように言いつつも、
すごく寂しそうな表情を浮かべている。

「長期任務なんて、今までも何度もあったじゃないですか」

「・・・うん。そうなんだけど、今回は一緒に行けるのかなって思ってたから」

なんて、かわいい事を言われたら僕もつい甘くなってしまう。
ふいに背を向けた先輩を、後ろから抱きしめてあげた。

「先輩は他の任務を任されたんですから、仕方ないですよ。
 ね?あっという間ですから、先輩」

「待ってる間は寂しいんだもん・・・!テンゾウの実力は俺が
 一番わかってるつもりだから、心配はしないけど・・・」

そう言って、先輩を抱きしめている僕の腕に
ぎゅっとしがみつく。その微妙な力加減が、
本当に寂しいと思ってる事を僕に思わせて、ますます
愛おしい気持ちが募る。

「分身でも置いていきましょうか?」

僕は冗談のつもりで言ったんだけど、先輩が
小さく頷いて体を僕のほうへと向けた。

「・・・分身が、任務に行ってくれたらいいのに」

「そんな事したら、火影様に怒られますよ」

「テンゾウは俺と会えなくても寂しくないの?」

「そうですね・・・寂しいですけど、帰ってきたら先輩いつも
 笑顔で迎えてくれるでしょう?その瞬間が僕は一番好きなんで
 任務が長ければ長い程、その時の喜びは大きいんです。
 逆に・・・待ってる時も、同じなんです」

だから先輩も、寂しいとは思いますけど
僕が帰ってくるのを待ってて下さい。

「そうだね。俺も、そう考えるよ。
 ・・・テンゾウのそういう所好き」

そう言って、先輩は顔を起こして僕の事を見つめた。
照れたような顔をしつつ、微笑みながらゆっくりと僕の唇に
ほんのりと赤くなったその唇を合わせて、キスをしてくれた。


僕はどんなに難しい任務でも、長期任務であったとしても
帰ってきたら真っ先に先輩に会いにきますから。
アナタの笑顔を見るために。