in the flight




    やきもち




         一話完結。後半、微エロ・・・です。






今日は暗部での忘年会。
付き合いが悪いと言われる僕だけど今年は参加してみようかと思ったのは
単純に僕の恋人の、カカシ先輩の事が心配で仕方がなかったから。

先輩はモテる。普段は適当な理由を付けてちゃんと断ったりしてるようなんだけど
こういう酒の席で、先輩を酔わせてどうこうしてやろうなんて企んでる奴が
どうやらいるらしい。


先輩がしっかりしててくれたら
心配なんてしなくてもいいんだけど
いかんせん先輩は酒に弱い。
そして酔うとタチが悪い。

先輩は酔うとすぐに甘えるし、抱きついて来たりするし、キスばっかりしたがる。

僕にだけだったらいいんだけど、もしそんな狼ばかりの忘年会で
酔っぱらってしまったら・・・と思うと、心配で行かずにはおれなかった。

だけど、僕と先輩が付き合っている事は内緒だから
そうなってしまった時に、どうやって先輩を飢えた狼達から
守ればいいのか考えると頭が痛い。



    *  *



任務でツーマンセルを組んでいた後輩と、遅れて宴会の場に行くと
もうすでに、皆出来上がっていて先輩も頬を赤らめてでき上がっていた。
でもまぁ、今の所は大丈夫みたいだな。

そう思って、開いていた隅の席に座る。

先輩の両隣には、先輩の事を邪な目で見ているであろう男二人が
がっちり座っていて、僕は気が気じゃない。
先輩は僕と目が合うと、にっこりと目尻を下げた。

・・・お願いだから先輩、あんまり呑まないで下さいよ。

と、散々僕が言った事を先輩はちょっとは守ってくれているようだった。

「テンゾウ先輩、おつかれさまでした。今日の任務、フォローしてもらって
 助かりました。先輩がいなかったら、どうなってた事か」

「え?あぁ・・・おつかれさま。色々言いたい事はあるけど、
 ま、今日は任務の話はやめておこう」

後輩にふいに声をかけられて、我に返る。
そうそう・・・忘年会だった。
先輩の事が気になって仕方がないけど、
あまり気を取られすぎていると
回りに気付かれてしまっては困る。

「じゃあ、乾杯」
「乾杯」

呑み遅れた僕と後輩で、ささやかに杯を交わす。

「ふぅ〜・・・やっぱり冬は熱燗だね」

僕がそう言うと、くすくすと笑われてしまった。

「テンゾウ先輩、熱燗似合いますね」

「・・・それって褒められてるんだかどうなんだか。
 熱燗でよかった?ビールとかの方が・・」

「いえいえ。同じもので」

「無理して飲まなくてもいいからね」

そうやって、後輩となんども酒を注ぎあいつつ
僕は先輩を横目で確認する。

どうやらもう酒はストップしているようだ。
烏龍茶を頼んで、回りから批判の声が上がっている。
そんな先輩を見て、僕はホっと胸を撫で下ろしたい気持ちになった。
安心した。

「テンゾウ先輩。何笑ってるんですか?」
「えっ?」

まさか一瞬だけ表情を緩ませた所を見られたなんて
思ってなかったから動揺してしまう。

「今、カカシさん見て笑ったでしょ、先輩」
「いやいや・・・。ほら、カカシさんは相変わらず人気者だなぁって思ってね」

適当に答えつつも、冷や汗が吹き出る。

「そうですね。カカシ先輩はいつもかっこいいですもん。
 僕も尊敬しています。人気があるのもわかりますけど、
 付き合うんだったら僕はテンゾウ先輩みたいな人がいいなぁ・・・」

そう言って、僕の肩に寄り添ってきた。
その顔を見ると、酒のせいか真っ赤になっている。

ちょっ・・・、この子、酔ってる?

というより、こんな所先輩に見られたら・・ヤバイ・・・!
恐る恐る僕は先輩の方へと顔を向けると・・・

むっすぅと、明らかに不機嫌な顔をしてこっちを見ていた。
そして僕と目が合うなりスっと立ち上がって、ドスドスと足音を立てて出て行ってしまう。

一気に血の気が引く。ま、まずい。

すぐに立ち上がって追いかけようとすると、ずしりと
酔っぱらっている後輩が僕の腕を掴んで、僕を行かせてくれない。

「テンゾウ先輩〜」

「は、離してくれ・・・」

腕を引き剥がそうと試みても、更に強くしがみつかれて離れなかった。
その様子に回りが気付き、まさに宴会の出し物状態。

「もっとやれ」だの「テンゾウ、逃げんなよ〜」だの馬鹿共がうるさい。

「あ〜・・・、もうっ・・・!」

僕は今こんな事してる場合じゃないんだから・・・!



   *  *   *



数分後。変わり身の術を使い、なんとか切り抜けて外に出る事に成功した僕は
店のすぐ裏で膝を抱え込んで座っている先輩を見つけた。

「先輩!」

僕が駆け寄ると、先輩はふん!といった感じで顔を背けた。

「あの、あれは僕も予想の範囲外だったっていうか・・・不可抗力でした」

「嘘!なんかお前、嬉しそうだったもん!」

・・・嬉しそうな顔をした覚えは、これっぽっちも無いんですが。

「俺が隣にいない事をいいことに、後輩といちゃいちゃしたりして
 信じらんない。最低!」

「先輩〜・・・」

どうやって機嫌を直そうか思案してみるけど、
ここは店のすぐ裏。抱きしめたりなんかして誰かに見られたら・・・
と思うと、躊躇ってしまう。

「・・・寒いですから行きましょう。  僕の家に来ますか?」

ね?先輩。あんまり駄々捏ねないでください。

すると首をブンブンと横に振って、ますます動いてくれそうにない。


・・・ああっ、もう仕方ない。

僕は座り込んでいる先輩の腕を力一杯引っ張りあげて、胸の中へ閉じ込めた。
ぎゅっとその肩を抱きしめると、小さくその肩が震えた。

「俺が見てる所で他の誰かと仲良くしたりしないで」

「・・・はい。ごめんなさい、先輩」

そういう先輩だって、しょっちゅう誰かと仲良さそうに喋ってますけどね。
でも僕は、先輩が浮気なんてしないって信じてるから今更そんな事言わない。

それよりも、僕は先輩にやきもちを焼かれるのがすごく好きで。
機嫌を取るのは大変だけど、拗ねた顔がかわいくてたまらないんだから。


「帰りましょうか」
「・・・うん」


そう言って、ふと顔を上げると・・・

消えた僕達を追って店から出てきたらしい皆が
物陰からわんさか、これまた見せ物よろしく覗いていた。

「わっ!・・・バレたぞ!」
「あぁもう、あともうちょっとだったのに!」

好き勝手、言いたい事を口々に言っている。


「・・・もう、いい加減にして下さい!」



      *  *



僕は一目散に先輩を抱えて家へと帰る。
やっぱり忘年会とか、宴会とかろくな事ないよ・・・。はぁ・・・。
それにバレちゃったな。せっかく隠してきたのに。

そう溜め息を吐いてる僕に、すっかり機嫌を直した先輩は
お酒が入ってるせいかごろごろと甘えてくる。
まぁいいか。先輩の機嫌もすぐに直ってくれたし。

「先輩、僕の言った事守ってくれて嬉しかったですよ」

今は僕の膝に頭を乗せて、髪を僕が撫でてあげると
気持ち良さそうに目を閉じた。

「だってテンゾウ怒ったら怖いから」

「そんな・・・僕、先輩に怒った事なんて無いでしょう」

適当な事言わないで下さいよ。

「それに先輩がお酒飲んだら、こんな風に甘えたり抱きついてきたりして、
 タチが悪いから言ったんですよ」

「タチが悪くて悪かったね。あと、俺酔っても
 テンゾウ以外の奴にそんな事しないからね、言っとくけど。
 こんなこと、酔ってないと恥ずかしくて出来ない」

そう言って、ぎゅっと腰に手を回して僕の膝に顔を埋めた。

確信犯だった訳ですか、先輩。かわいすぎですよ。

そんな先輩を見ていると、ムラムラしてきてだんだんと
前が膨らんで来る。先輩がそこに顔を埋めていると思うと余計に。

「ちょっとテンゾウ、人の顔に変なもの押し付けてこないでよ」

と、先輩は言いつつもモゾモゾと僕のモノを引っ張り出そうと
ズボンを脱がそうとしている。それも嬉しそうに。

僕はその様子を呆れつつも、やっぱり可愛く思えて静かに見守った。

「テンゾウのエッチ。こんなにおっきくして」

僕のを引っ張り出すのに成功した先輩が、可愛い顔で言って僕を見上げた。

さっきまであんなに拗ねてたのに。
そう思って、クスリと笑うとまたムッとした顔に戻った。

「何笑ってんのよ」
「いえいえ、どうぞ続けて下さい」
「もう・・・!でも・・・テンゾウのこれ、俺専用なんだからね」


と、直球すぎる台詞を吐かれて理性が吹っ飛びそうになるけどそこは我慢して。
俺専用だと言い張る僕のものを咥え込んだ先輩を見つめて
その直後に訪れた、とろけそうに熱くて甘い感覚に、僕はゆっくりと目を閉じた。