in the flight





あめ玉 11








里に帰って、俺は即入院となった。
テンゾウもしばらくは自宅待機。

こんな結果になったのは俺が無理をしたせいだから、テンゾウは悪くないんです。と
火影様に言えば、俺に無理をさせたテンゾウも悪い、と。
怒るというよりは、またお前達は・・・と、呆れ顔をされてしまった。


     *


何もない病院の個室で、できる事といえば本を読む事ぐらいだった。
たまに尋ねてくる客が来る度に、テンゾウかと思ってドキドキして、
でもそれがテンゾウじゃないと分かれば溜め息ばかり吐いていた。
入院してから数日経つけれど、あれから一度もテンゾウは来なかった。

な〜んで来ないのかな、あいつ。
俺との約束、忘れちゃったのかな。
任務には出ていないはずだし、テンゾウだって退屈してるはず。
修行するにしたって、ちょっとぐらい顔出す時間はあるでしょ。


「カカシ、聞いてんのか」


はっと気付けば、目の前にアスマの顔があった。
一緒に見舞いに来てくれていた紅も、怪訝な顔をしている。

「・・・悪い。聞いてなかった」

素直にそう答えれば、二人とも呆れたような溜め息を吐いた。

「・・・カカシ、誰か来るの待ってるんでしょ」

女の感というのは鋭いもので、俺のこの憂鬱な気持ちの原因に気付いた様子。

「見舞いに来るって言ってた奴が、来ないんだよねぇ・・・」


そう言って窓の外を見れば、青空が広がっていた。
病院からテンゾウの住む家は、割と近い。
体が動かせたら、すぐにでも会いに行ける距離なんだけどなぁ。

「・・・それって、テンゾウの事か?」
「何で分かるのよ」
「さっき見かけたぞ?病院の入り口ですれ違ったから、見舞いの帰りかと思ってたんだが」
「来てないよ。あいつ、見舞いに来るって言っといて・・・」
「一昨日来た時も、そういえば見かけたぞ」
「見間違いじゃなく?」
「カカシ、あなたもしかして・・・」

しばらく俺の様子を黙って見ていた紅が、眉を潜める。
気付かれたと思って、視線をそらした。

「いや、そんなんじゃ・・・」
「そう?でも会いたいんでしょ?」
「・・・そうなのか?カカシ」
「あ〜・・・。・・・まぁ、そんな感じ・・・」

なんて言ったらいいのか。二人に詰め寄られると、嘘も言えなくて。

「・・・ガイには言わないでちょうだいよ。面倒だから」
「しかし、驚いたな。相手が男だって事はともかく、お前にそんな奴ができるなんてな」
「会いに行くように、言っといてあげる。病院まで来てるって事は、向こうも会いたいんでしょ」
「いや。・・・言わなくていいよ」
「どうして?」
「約束したんだ。だから、いい」

会いに来ないのは、俺に会いたくない理由があるんだろうし。
それに、絶対に行きますからって言った、テンゾウの言葉を信じる。

「そ?ま、応援するから・・・頑張りなさいよ」
「・・・ありがと」


   *


二人が帰ってから、病室内がやけに静かに感じた。
テンゾウが来たら話したい事がいっぱいあるのにな。

そう思いながら本を開いてみても、いつもは夢中で読んでしまう大好きな本なのに、上の空。
深く溜め息を吐いて目を閉じる。

・・・会いたいなぁ、テンゾウに。








Home