in the flight





あめ玉 1 3














「毎日来てたんです、病院に。でも、言わなきゃいけないって思ったら病室までなかなか足が進まなくて・・・。
 でも、ちゃんと言えて良かったです。あの時キスしたのも、見舞いに来れなかったのも、先輩のことが好きだったからです」


「・・・本当に?」
「え?」
「本当に俺のこと好き・・・なの?」

そう言った先輩は少しムッとしたような顔をしている。

「はい・・・」


すると、はぁ〜っと大きく溜め息を吐き出した。今度は呆れているみたい。
でも僕は、それでも先輩が何を想ってそんな表情なのかが全くわからない。

「嘘だ。俺があれだけ誘ってたのに、お前・・・全然平気そうだったじゃない」

平気そうって・・・めちゃくちゃ大変だったんだけどな。
やっぱりあれ、わざとだったんだ。
・・・って、あれ?誘ってたって、どういう意味?

「先輩、それって・・・」
「お前の事、好きなの。俺も」
「・・・嘘でしょう。からかってるんじゃないんですか」
「嘘なんかつかないよ」
「だって、先輩こそ何とも思ってなさそうだったじゃないですか。だから僕、からかわれてるのかって思ったりしてたんですよ」
「チャクラ切れで体動かなかったんだもん。じゃなかったらあんな事しないよ。色々、我慢できなくなるでしょ。
 ・・・ま、やりすぎたかなとは思ってるけど」


そう言って・・・先輩はにっこりと笑った。
まったく。僕はあれだけ必死に我慢していたのに。

「そりゃそうですよ・・・僕の方は大変だったんですからね。
キスしたのだって、我慢できなかった僕が悪いとは思いますけど
先輩がそうするように仕向けたんじゃないですか」


自分の体が動かない事をいいことに・・・なんてずるい人なんだろうと思った。
でもそれ以上に、かわいいと思ってしまった。我ながら、重傷だと思う。
それ程までに僕は先輩のことが好きなんだ。

「悪かったよ。もうしないから、ね?」

にこにこと笑いながら首を傾げる先輩を見ていたら
どうしようもなく、抱きしめたくなってしまって。

「じゃあ僕もう我慢しなくても、いいんですね」

握りしめたままだった手を離して、先輩を抱きしめた。

「・・・誰か来たらどうすんのよ」
「結界張りましょうか」
「ばか」

呆れたような、でも甘さも滲んだ声で先輩は言って僕の背中に手を回した。

「今日は我慢してちょうだいよ。いくらなんでも、病院でこれ以上は・・・」
「わかってますけど」
「けど・・・?」
「キスしたいんですが」


そう言って体を離し、先輩の顔を覗き込むとその顔は赤くなってて。
この間と随分違う反応だなと思ったけど、あの時の先輩はチャクラ切れで
体も動かせない状況だったから。
本当はこんなにかわいい反応してくれる人だったんだ。

「・・・だから、今日は駄目」
「どうしてです?」
「今日はもう充分だから。お前が俺の事好きって分かっただけで」


言いにくそうに、照れたように言う先輩がとても愛おしく思えて
気が付けば僕は口布に手を伸ばしていた。
先輩は駄目だって言っていたけれど、それを止めさせようとしないもんだから
そのまま先輩の唇にキスをしたら、熱い溜め息が漏れた。

「・・・っ」

少しだけ唇を離して先輩を見つめれば、半分開けられた目が
物欲しそうに僕を見つめている。

「そんな嬉しい事を言われたら、何もせずでいられる訳ないじゃないですか」
「・・・そんなつもりじゃないよ」
「本当ですか?・・・でも、どっちにしたって僕はもう我慢しませんから」
「んっ・・・っ・・・」


そう言って僕はもう一度、唇を合わせて深くくちづけた。
先輩の言う事はもうあまり真に受けないでおこう。
だって、駄目だって言っておきながらも
唇を開いて僕の舌を受け入れてくれているんだから。


先輩の熱っぽい溜め息を聞いているうちに、下半身に熱が集まり始めたけど
さすがにこれ以上求めたら怒られるんだろうなぁ・・・。
そう思いながらも、先輩とのキスは気持ちよくてなかなか止められなかった。
気が付けば陽はすっかり落ちて、病室の中は真っ暗になっていた。

「・・・テンゾ、もう本当に駄目」
「駄目ですか?」
「そろそろ夕食の時間だから・・・」

そう言って先輩は名残り惜しそうに顔を離して、恥ずかしそうに笑った。

「明日の朝、退院だから。・・・おいしいの、食べさせてね」
「・・・わかりました。退院祝いしましょう」







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