in the flight





あめ玉 1 9














唇に柔らかい感触を感じて目が覚めた。
ゆっくり目を開いてみると、すぐ目の前に先輩の顔があって
キスされている事に気が付いた。

先輩の瞼は閉じたままで、僕が起きている事にはまだ気が付いていない。
これは・・・どうしよう。すごく嬉しいかも。

思わず僕も瞼を閉じて、チュッと唇を押し返せば
先輩の体がビクリと体が震えて唇が離れていった。

「お・・・起きてたのっ?!」

ギョッとした様子で、目をまん丸にしながら驚いている先輩の顔は真っ赤だった。
そんな先輩がかわいくて、にっこりと微笑み返す。

「残念ながら途中からですが・・・」
「・・・」

僕がそう答えたら、言葉を無くした様子で枕に顔を埋めてしまった。
自分からキスしておいて、こんな反応するとか反則すぎる。
本当に恥ずかしがりな人なんだなぁ・・・。
こんな人が、このあいだの任務中にあんな大胆な事をしたり言ったりしてたなんて 信じられない。
ずっと掴み所がない人だと思っていたけれど、ほんの少しだけ先輩に近づけたようで。すごく嬉しい。

すぐ目の前にある先輩の髪の毛に触れて、そっと撫でてみた。

「ねぇ先輩、顔あげてくださいよ」
「嫌だ」
「どうしてです?」
「・・・あんな事してテンゾウに気付かれたのが、恥ずかしい」

もう、どうして本当にこの人は僕の喜ぶことばかり言ってくれるのだろう。
気を付けていないと、すぐに理性なんて無くなってしまいそうだ。

「嬉しかったです。だから恥ずかしいなんて思わないで下さい」
「テンゾウは恥ずかしくなくても、俺は恥ずかしいの・・・!」

そう言って、ますます顔を上げてくれそうになかったから
僕に背中を向けたままの先輩に覆い被さってぎゅっと抱きしめた。

「続き、したいです」

耳元で囁けば体がビクリと強張って、首を小さく横に振る。

「じゃあ、もっと恥ずかしい事しますよ?」

そう言って服の裾から手を差し込んで背中に触れると、
慌てて体を捻って僕のほうに体を向けた。
目が合えば諦めたように瞼を半分だけ降ろしたから、
僕はその唇に触れるだけのキスをした。


先輩が好きで、たまらなくて、泣きたくなってしまう。
こんなに近くにいて、すぐに触れられる距離にいられるのに
それでも足りないくらいに先輩のことが好きで。

自分でもどうしたらいいのか分からない。


「・・・何考えてるの」
「えっ・・・、あ・・・すみません。先輩のこと、考えてました」
「嘘くさい」
「本当ですって」

怪訝な顔で見上げている先輩に、もう一度深く唇を重ねる。
こうやって唇を重ねるごとに先輩の事が好きになって。
ずっと一緒にいたいとか思ってしまうけど、先輩はどうなんだろう。

しばらくしたらきっと先輩は暗部を抜ける事になるだろうから。
そうなったら、今までみたいに頻繁に会う事は難しくなる。
だから少しでも多く先輩と一緒にいたい。








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