「ん・・・っ、ちょ、苦しい」
先輩が息苦しそうに踠いて唇を離した。
つい色々と考えてしまったせいで、無意識に深くしすぎてしまったかもしれない。
「すみません・・・」
「嫌だとか、そういうんじゃないからね。でも、ちょっと体力が・・・ほら、昨日飲み過ぎたし、色々と・・・」
言いにくそうにモゴモゴ口籠りながら言うのがかわいくて、頬の筋肉が緩んでしまう。
「はい。これ以上はしません・・・病み上がりなのに、無理させちゃいましたよね」
「あれは・・・俺が悪いでしょ」
「悪くなんてないですけど、後悔してたりしませんか・・・?」
僕の事が好きだって言ってくれたけど、先輩は本当に僕としたくて誘ってくれたのかどうか分からない。
酔った勢いだったっていう事もあるかもしれない。
それに本当は逆が良かったとか思ってたらどうしよう。
でも、どう考えたって先輩が上とかありえないのだけど。
「後悔なんかする訳ないでしょ。むしろそれは、こっちが聞きたいっていうか・・・」
「 さっきも言いましたが、僕は今もしたくて仕方無い程ですよ」
「・・・俺、酔ってたけど・・・酔った勢いでとか、そういうのじゃないから」
「そうだったんですか・・・。嬉しいです」
「でもさすがに体がちょっと重いな」
先輩はそう言って、もぞもぞと体を起こした。
その上半身には所々に僕が残したらしい痕が残っていて、昨晩の出来事が生々しく甦ってしまう。
目のやり場に困るなぁと視線を逸らした。
「シャワー浴びてくる。先にいい?」
「あ、はい。僕も後で使わせてもらいます」
先輩はベッドの下に落ちて散らばっていた服を取り上げて、照れくさそうに頭を掻いた。
「これ、一緒に洗う? 俺の着ればいいと思うし」
「じゃあ先輩がシャワー浴びてる間、僕が洗濯しておきますよ」
そう言って僕も起きあがる。
すっと伸びた背中を見て、思わず後ろから抱きしめた。
抱きしめたら暖かい体温が伝わってきて思わず顔の筋肉が緩んでしまった。
「ちょ・・・テンゾ」
「少しだけ、こうさせていて下さい」
何もしませんからと付け加えて、寝癖だらけの先輩の髪に顔を埋める。
先輩はその言葉に小さく頷いて俯いた。
「・・・心臓の音、早い」
呟くように言ったその言葉に、先輩を抱きしめてるのだからそうなっているんだと言いかけたけど、
同じように先輩の心臓の音も早かったからそう伝えると、抱きしめていた僕の腕を振り切るようにいきなり立ち上がった。
「風呂っ・・・入ってくるから」
慌てた様子でそう言って。まるで逃げ込むかのように浴室に向かった先輩の横顔は赤くなっていて、
あまりにもそれが可愛くて僕は思わず吹き出してしまった。
それと同時に、こんなにも甘くてしあわせな時間がずっと続けばいいと思った。