in the flight





あめ玉 22








明け方にやっとの事で報告書を書き終えて、テンゾウの家に行く事にした。
朝ご飯でも作ってあげようと思って家から食材を持って。

久しぶりに入った部屋の中は埃っぽくて、ほとんど家に帰ってきていないんだと思った。
部屋の奥まで行って窓を開ける。
待ってるあいだ暇だから掃除でもしよう。

この様子じゃ洗濯物も溜め込んでいるだろうと思って洗濯機が置いてある脱衣所に行ってみれば
思った通り洗濯物が山積みになっていた。
あの几帳面なテンゾウの事を考えると有り得ない状況。
いくら丈夫だからとはいえ、やっぱり働きすぎだよなぁ。
テンゾウじゃなきゃ駄目な任務なんて、そうも無いはずだし。

そんな事を考えながら汚れた服の山を洗濯機の中に全部押し込んで、部屋の掃除を始めた。


テンゾウの部屋。
よくよく考えれば、部屋に入ったのは数回だけ。
いつもテンゾウが俺のところに来るからなんだけど・・・そういえば俺、
自分から訪ねた事は無かったかもしれない。
会う時はテンゾウの家でと言い出したのは俺なのに、その後一度も来ていない。
俺、最低かも。・・・そりゃ会えない筈だ。
俺がこうやって帰って来るのを待ってやってたら、ほんの少しでも会えただろうに。
当たり前のようにテンゾウが会いに来るのを待ってた。

テンゾウはどう思ってるんだろう、怒ってるかな。
俺だったら多分怒ってると思う。
やっぱりどう考えても、俺が悪いよなぁ・・・。

洗濯物と布団を干してから、朝食を用意する。
もうそろそろ帰ってきてもいいのになぁ。
待っている時間って、なんでこんなに長く感じるんだろう。
朝食の魚の干物は帰ってきてから焼けばいいかとソファで一息つく事にした。
持ってきていたイチャイチャパラダイスを開いて読み始めてしまえば最後。
気が付いた時にはもう昼前だった。

いくらなんでも遅すぎ。
気になり出したら、いてもたっても居れなくなって暗部待機所に行ってみる事にした。
最近のテンゾウの忙しい理由も聞けるかもしれない。

    *

上忍服で暗部待機所に入るのには抵抗があったけれど、
中に入ってみれば知った顔ばかりで。

「カカシさん! お久しぶりです。どうしたんですか?」
「いや。テンゾウいるかなと思って」
「テンゾウなら明け方に帰ってきてましたよ。さすがに今日は休みなんじゃないですかね」
「帰ってきてるって・・・家にいるの?」
「そこまでは分かりませんよ」

家に帰ってきていない事は百も承知なんだけど、思わず聞き返してしまった。
だって。帰ってきてるんなら、どこに行ったんだろう。
昨日あんな事言ってしまったから、俺の家には来るはずがない。

「テンゾウなら最近よく組んでる兎面と飯に行きましたよ。いつもの店じゃないっすか?」

ここは諦めて帰ろうかと思っていたら、横から狗面を付けた男が言った。
兎面ってそういえば、テンゾウの事慕ってたんじゃなかったけ。
大体テンゾウも休みができたのなら、連絡ぐらいくれたっていいのに・・・。
俺といるより兎面と一緒にいるほうが楽しいって事?
やっぱり昨日の俺の態度・・・かなぁ。

「ありがとう。・・・最近、忙しいの?」
「あぁ、テンゾウですか。あいつ自分で任務の申請してるらしいっすよ。
 働きすぎだって、カカシさんからも言ってやって下さいよ・・・」

やっぱりね。そんな事じゃないかとも思った。
だけど、どうして任務の数を増やす必要があるんだろう?
俺と会いたくないとか・・・は、無さそうだし。
会って早く話がしたいのに。

    *

結局。テンゾウが行ったという暗部御用達の食堂の前まで来てしまった。
まだ中にいるんだろうけど、他の男と一緒にいる所を見たくなくて中に入れない。
それに。暗部待機所まで行って居場所を聞いたなんて知られたら、なんていうか・・・恥ずかしい。

やっぱり・・・テンゾウの家で帰ってくるのを待っていようか。
だけどもし兎面と一緒に帰ってきたら・・・なんて、そんな訳ないよね。テンゾウに限って。
どうしたらいいかを店先で長い間考え込んでいたら、ポツポツと大粒の雨が降ってきた。
空を見上げてみれば、いつの間にか黒い雲が覆っていて。

「洗濯物・・・って、布団!」

干したままで出てきちゃったから、すぐに取り込まないと。
考えるのは止めて、大急ぎでテンゾウの家に戻る事にした。








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