in the flight




居酒屋

    肉体的な表現はありませんが、リバ表現あります。居酒屋→相合傘と、話は続いています。(でも短いです)





任務を終えて里に着いた途端、大粒の雨が降り出した。
報告をした後、雨の中を一人で真っ直ぐ家へ帰る気にはなれなくて、
ふらり、暗部御用達の居酒屋へと立ち寄った。
ひとりで入る事は殆どないけど、腹が減っていたのと、なんとなく
テンゾウがいるような気がしたせいかもしれない。

店の引き戸を開き中に入ると、そこには思った通りに
店の奥の席にテンゾウが、他の暗部の奴らと一緒にいた。

目が合った。
でも、テンゾウは・・・俺からすぐ視線をそらした。
どうやら、まだ怒ってるみたい。
ふう・・・と軽く溜め息をひとつ吐いて、何も言わず一人、カウンターの席へ座った。

熱燗と。カウンターの上に、どんと盛られている煮物とお惣菜の中から
適当に頼んでみたけれど、箸が進まない。

大体、どうしてこんな事になってしまったんだろう。
テンゾウとは、長い付き合いだけど、こんなのって初めてだ。
ま、俺の言い方が悪かったかもしれないけど、まさかテンゾウが
あんな風に取るなんて思ってもみなかったから。

この間、テンゾウとセックスした後。
俺もたまには挿れられるんじゃなくて、挿れたいなぁ。なんて言ったら
僕じゃ不満なんですか。だとか、僕とするの本当は嫌だったんですか。とか、
人の話も聞かないで散々俺の事攻めて。
挙げ句の果てには、じゃあもう好きなだけ、男でも女でも抱いたらいいじゃないですか。
だなんて言い放って、帰ったっきり。そして今日に至る訳。

ったく。なんなの、あいつ。俺、そんなつもりで言ったんじゃなかったのに。
ましてや、セックスした後に言ってんだから。勘違いにも程があるでしょ。
まぁ、テンゾウからしてみたら・・・まさか自分のケツの事だとは思わなかったのかもしれないけど。

その時、テンゾウが怒ってる様子に呆気に取られてた俺も悪いんだけどね・・・。

はぁ・・・。
テンゾウがいるかもって、居酒屋に来たけど。
こんな所で話なんてできる訳ないし、余計に気分悪くなった。

こんなんじゃ飯も酒も美味くなくて当然。
テンゾウも飲んでるって事は、今日はもう任務の予定が無いんだろう。
夜中にでも、会いに行って誤解を解こう。

店の奥のほうから聞こえて来る楽しそうな笑い声を聞きながら、静かに店を出た。






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