「・・・っ、ん・・・」
さっきキスをした時よりも心臓の音がうるさい。
頭の横にあるテンゾウの手を握ると強く握り返され、舌が唇を割って潜り込んでくる。
息苦しくなって唇を開いたら、さらに深く進入してきた。
口内をぬるぬると一方的に舐められると、頭がぼんやりとしてしまう。
流れ込んでくる唾液すらも飲み込めない程、息継ぎをさせてくれないから体を捩らせて藻掻いた。
腰にぐいぐいと押しつけられるテンゾウの下半身はとても堅く、
開いている手を伸ばしてそっと下から撫でるように触れてみたら、体をびくりと震わせた。
テンゾウにも気持ち良くなってもらいたいと思って少し強めに摩れば、テンゾウの吐く息が乱れる。
感じてもらえる事が嬉しく思えて形を確かめるように撫であげると唇が離れた。
「っ・・・先輩・・・」
「気持ち良くなかった？ごめーんね、俺慣れてないから」
からかうように言えば、テンゾウの目があちこちに泳いだ。
「いや、そういう意味でいったんじゃ・・・」
「慣れてないけどね、俺だって何かしたいとか思うし。触ってほしそうに押しつけられたりしたら、仕方ないでしょ」
そう言って、俺はテンゾウのズボンに手をかけて膝の辺りまで降ろした。
下着越しに触れるとズボンの上からは、あまり分からなかったその大きさに驚いた。
俺よりでかいんじゃないの、これ。
だんだん早くなるテンゾウの熱い息が耳にかかってゾクゾクしてしまう。
「っ、・・・気持ちいいです」
テンゾウは俺の服を捲り上げて脱がす。それからすぐにズボンにも手をかけるから、俺もテンゾウのアンダーを脱がした。
あまり見ることがなかったテンゾウの体を見てドキドキしていると、抱きしめられて首筋に唇が押し当てられた。
ちゅ、と音を立てながら何度も吸い付くようにキスされると、腰にまた熱が集まりだしてしまう。
そのまま唇が下に降りて、さっき弄られて敏感になっている乳首を舌で舐められた。
「ぁっ・・・」
甘い痺れるような感覚に我慢ができず声を上げてしまう。体がムズムズして、テンゾウの背中を抱きしめた。
「乳首舐められるの、好きなんですか？」
テンゾウが顔を上げてそう言った。
目が合って恥ずかしくなり顔を背けたら、テンゾウの手が伸びてきて頬を包み込むように撫でられる。
乳首を舐められて、こんなふうに感じたのは初めてだった。
首を横に振ると、ちくりと鋭い痛みが走った。
「い・・・っ、は・・・ぁっ」
歯で乳首を挟まれて先端を舌で舐められて、甘い痛みに変わっていく。
いつの間にかさっき達した自身が、また堅くなり始めてしまっている。
「先輩、ちょっと待ってて下さい」
突然テンゾウはそう言ってベッドから出て行った。
もしかしてトイレかと思ったのだけど、部屋の中の引き出しをごそごそ漁ってからすぐに戻ってきた。
ぽかんと見上げる俺を上から抱きしめる。
「嫌だったら嫌だって、言ってください」
そう言ってテンゾウは俺の頭の上で容器の蓋を開けた。
「え、何」
「塗り薬・・・です」
俺の下半身に手を回し、お尻に塗りつけられた。
分かってはいたけれど緊張して体が強張ってしまう。
「・・・ん・・・っ」
指が入り口に触れて体が大きく震えてしまった。誰にも触れられた事が無い場所を弄られるとどうなるのかなんて、全く想像が付かない。
何度か入り口を撫で回されたあと、すぅっとテンゾウの指が体の中に挿入された。
「あ・・・んん・・・」
「痛くはないですか」
「・・・全然、平気」
「じゃ、そのまま力を抜いてて下さい」
今まで味わった事のない感覚かもしれない。何度も抜き差しを繰り返されるうちに、気持ちよくなってきてしまった。
「ぁ・・・あ、・・・っ」
そして指がもう一本増やされ、内壁を押し拡げるように指の腹で擦られる。
「・・・・先輩、ここ弄られるの初めてですか」
そう聞かれて素直に頷くとテンゾウの指がピタリと止まり、体を起こして俺の顔を怪訝な顔で見つめた。
「それ、本当ですか」
「嘘なんか付くわけないでしょ」
そう言ってもテンゾウはまだ疑っているような顔をしたままだ。
「ですよね。先輩、感じやすいから初めてじゃないんだと思って。別に初めてじゃなくても良いんですけどね、僕は」
感じやすいなんて言われて顔から火が出そうになってしまったけれど
テンゾウとやった事のある他の奴と比べられているような気分になってしまった。
別にこいつが誰と寝てきたなんて今の俺には関係ないのに、嫉妬してしまっているんだろうか。
テンゾウの首に腕を絡ませて引き寄せ、唇を合わせた。余計な事を考えたくない。
舌を潜り込ませ、戸惑っているようなテンゾウの舌を絡め取れば更に深く舌が捻り込まれた。
そして挿れられたままだった指で、ぐちゅぐちゅと大きな水音が立つほど体内を掻き回される。
「んん・・・っ、は・・・、ぁ」
テンゾウは指を動かしながら同じ部分を何度も擦るのだけど、怖くなるほど強い快感が体中に広がった。
無意識に体中が震えてしまう。唇を無理矢理離して、必死で喘ぐけれど呼吸も上手く出来ないほど。
もうやめて欲しいと、テンゾウの肩に手をかけて押しのけようとするのだけど、震えてしまって力が入らない。
意識が飛んでしまいそうになった時、すっと指が引き抜かれた。
やっとの事で目を開けると、軽くキスをされた。
「今・・・何したの？」
「先輩の気持ちいい所を、ちょっと弄っただけです。・・・今日はもう、これでやめておきましょうか」
あまりにもの快感の強さに放心状態の俺を見て、心配そうな顔をしていた。
俺は首を横に振る。こんな状態でも何か物足りないと思うのはテンゾウが欲しいと思っているから。
「誕生日プレゼントのつもりなんでしょ？」
俺がそう言えば、テンゾウは顔を真っ赤にさせた。冗談だったのに、もしかして図星だった訳？
「僕なんかで良ければ、もらってやって下さい・・・」
言いにくそうに言ったテンゾウを見て恥ずかしい奴とか思いながらも、ぎゅっと胸が締め付けられた。
やっぱり馬鹿なのかもしれないなんて思ったけど、そんなテンゾウが好きだと思ってしまったんだ。
「仕方ないから、もらってやるよ」
気を失いかけるほど感じさせられておきながら上から目線なのは、先輩としての威厳を保ちたいとかちょっと思ってたりする訳で。
テンゾウはそんな俺を見て、目尻を思い切り下げながら嬉しそうに笑う。
「大好きです。先輩」
真っ直ぐにそう言われて、顔が熱くなった。
何も言えずに見上げていたら唇が塞がれて足を抱え上げられる。
押し当てられた熱いテンゾウのものが、ゆっくりと肉壁を押し広げながら進入してくる。
「・・・っ、ふ・・・、んぅ・・・っ」
塗り薬を塗ってくれていなかったら、とてもじゃないけど入りそうになかったと思う。
痛みも多少あるけれど、それよりも何とも言えない感覚に慣れなくて、テンゾウの首に腕を回してしがみついた。
唇が離されたから閉じていた目を開けると、苦しそうに少し眉間に皺を寄せたテンゾウの顔があった。
肩を揺らしながら切なそうに見つめられ、心臓が跳ね上がる。
「全部入りました。・・・辛くないですか」
テンゾウの手が額の汗を拭ってくれた。俺はうなずいて、多分って答える。
じっとしていたら、テンゾウのがドクドクと脈を打っているのが伝わってきて体が更に熱くなった。
「動いてもいいですか」
溜め息混じりの熱っぽい声でテンゾウは言って、苦笑いをした。
「気持ち良すぎて、すぐイっちゃいそうです」
「・・・うん。好きにしていいから」
そう答えて、テンゾウの髪をくしゃりと撫でてやると、ゆっくりと腰が動きはじめた。
さっき中を弄られて感じた感覚とは、また違う快感の波が押し寄せる。
テンゾウのが出たり入ったりするだけで、体が浮いてしまう。
「んっ・・・あ、あぁっ」
徐々に早くなる腰の動きに声を我慢することも忘れる。
いつの間にか勃起していた自分のものを無意識に扱いてしまった。テンゾウにその手を掴まれて気がつく。
「イキたい」
「一緒に、イキましょう。僕も、もうそろそろ・・・」
そう言って、テンゾウが俺のを扱いてくれる。
与えられる快感が強すぎて頭がおかしくなりそうだと思った。
「あ・・・ぁ、っ・・・イ、キそう・・・」
そう伝えたら強く腰を打ち付けられ、目の前が一瞬白くなって何が起きたのか分からなくなってしまったけど、
体の奥が濡らされるのを感じて自分もテンゾウも一緒にイったのだと理解した。
体を動かそうという気が全く起きず、水が飲みたいと言ったらすぐに取ってきてくれた。
真っ裸のままで出て行ったテンゾウの姿を見て、現実に引き戻されたというか、
後輩とやってしまったのだと思うと冷や汗が溢れだした。
しかも好きだと言われて、俺もテンゾウの事が好きだと自覚してしまった事が一番自分でも驚いてしまう。
水の入ったグラスを二つ持って戻ってきたテンゾウは、ベッドに腰をかけて俺にひとつ手渡してくれた。
「ありがとう」
起き上がって飲み干して、テンゾウの背中を眺めた。
他人と深く関わる事はしたくないと思っていたけれど、
もう多分後戻りができないほどにテンゾウの事が好きだと思ってしまっている。
「・・・ま、いいか。テンゾウだし」
ぽつりと呟くと、すごい勢いでテンゾウが振り返った。
「ちょっと先輩、それどういう・・・」
その背中を後ろから抱きしめる。テンゾウとなら、大丈夫な気がする。
「好きだよ」
そう言えば驚いたようにテンゾウは固まった。
それから、言っておきたい事を続けて伝えた。
「あと、プレゼントありがとね。ずっと大事にするから」
おしまい