in the flight





waterfall 2








それからテンゾウの家に行った。
結局、酔っぱらったテンゾウに肩を貸す事になってしまって送り届けたのだけど。

「一緒にいてください」

そう言われて手首を強く掴まれて言われたら、帰るとは言えなかった。
テンゾウの家は何度か入った事があるから、ソファにテンゾウを座らせて台所に水を汲みに行った。
自分も一口飲んでから部屋に戻るとテンゾウが目を閉じてすぅすぅと息を吐いていたから、
眠ってしまったのだと思ってテーブルに水を置いてソファの下に膝をつき、テンゾウの顔を眺めることにした。
俺が好きだなんてテンゾウも変わってる。

テンゾウをベッドに運ぼうと思い、額宛を外してやろうと手にかけた。
髪の毛は、ふかふかと柔らかい。そっと触れてみたら、突然手を握られて驚く。
テンゾウはうっすらと目を開けて、ぼんやりと俺を見ている。
顔の距離が近くて心臓が早くなった。
もう片方の手で後頭部を軽く掴まれ、引き寄せられてキスをされた。
唇を少し開いて、俺からも唇を重ねたらズルズルと後ろに倒れ込んで
テンゾウの上に乗っかるような形でソファの上に横になった。

開いた唇の隙間からテンゾウの舌が潜り込んでくる。
生暖かい感触に体が震えた。
テンゾウの手がアンダーの裾から潜り込んできて、背中を撫で回すから
強張っていた体から力が抜ける。
体が熱くなって、無意識にため息が出てしまう。
「・・・っ」
口内で動き回る舌が、俺の舌を絡め取る。
ざらざらとした感触は気持ちが良くて、俺も絡ませた。

テンゾウの手はそのまま下に降りていき、ズボンの中に滑り込んできた。
何度も形を確かめるように腰から尻を撫でる。
男に体を触れられるのは気持ち悪いかもしれないって思っていたけど、
全然そんな事はなくてむしろ気持ち良かった。
俺、やっぱりテンゾウの事が好きなんだろうか。じゃなきゃ、気持ちいいなんて思える訳がない。
いつのまにかお互い前を堅くしていた。そんな自分に驚きながらも、
俺なんかで勃起するテンゾウが愛おしいと思った。

テンゾウの手が下着越しに触れた。
「っ・・・」
ゆっくり包み込むように、上下に動かされる。
唇を塞いでるのが苦しくなって唇を離せば体勢をひっくり返された。
テンゾウを見上げれば、さっきまでは眠たげだった目がいつの間にか男の目をしていた。
「好きです」
ため息混じりで言われた言葉が胸に突き刺さり、ズキズキと痛む。
なんて答えたらいいのか分からない。

テンゾウは俺の服を捲り上げて、唇を落とす。
少し動かされただけで体はどんどんと熱くなってしまう。
胸の先端を舌で舐められると、体がびくりと震えた。

「ぅ・・・ん・・・っ」

そしてテンゾウの手が下に伸びていき、ズボンと下着を降ろした。
テンゾウとキスしただけなのに、もう張り詰めてしまって
どうにかしたくて仕方ない状態になってしまっていた。
触ってほしいのに、テンゾウは中々触れてくれそうにない。
焦らしているのか躊躇っているのか分からないけれど、もどかしい。

「・・・テンゾ」
「はい」

我慢できずに名前を呼んでしまったけれど、その言葉の続きが中々言えない。
テンゾウは顔を上げて俺をじっと見ている。
真っ直ぐな目で見られたら、余計に照れてしまって言えなくなってしまった。

「やっぱり嫌ですか」

そう言って体を起こそうとするのを、頭を抱きしめるようにして引き止める。

「嫌だったら起たない。それぐらい分かるでしょ」
「・・・先輩」
「だから触ってほしい。我慢してるの辛いから」

自分でしてしまうのも、二人でこういう事してる意味がないし。
何よりも多分、テンゾウにしてもらいたいと思ってるんだと思う。

「本当にいいんですか」

顔を上げたテンゾウが真面目な顔で聞いてくるから、余計に恥ずかしくなって顔を背けて頷くと
テンゾウはソファから降りてその場に膝を付く。

「・・・気持ち良かったんですね。先走りが零れ落ちてる」
「恥ずかしいから、そんなに見るな」

そう言って、腕で顔を覆う。
テンゾウに見られてると思っただけで、更に先走りが溢れ出てしまっている。 俺はそんなに性欲強くないはずなのに、どうなってしまっているんだろう。


テンゾウの手が根本に添えられて、先端部分を生暖かい感触が包み込む。
唇の感触がたまらないほど気持ち良くて、テンゾウの髪を強く掴んでしまった。
そのまま咥えこんだまま舌全体で何度も舐められただけで、目の前がクラクラする。

「・・・っ、ごめん、すぐ・・・イキそう」

自分でも信じられないけれど、絶頂が近い。
テンゾウは唇を離して、俺に起き上がるように言った。
言われるがままに体を起こしてソファにもたれて座ると、すぐにテンゾウが下半身に顔を埋めて
もう一度咥えこんだ。
奥まですっぽり熱い口内に飲み込まれ、ゆっくりと上下に動かされたら何も考えられなくなる。
動かされる度に響く水音と、自分の声が静かな部屋に響き渡っているのも気にしていられない位だった。

「ぁ・・・っ、・・・ん、も・・・離し・・・、っ」

出そうだったから、もういいと離そうとしたのにテンゾウは離れてくれなくて
喉の奥にどくどくと欲を吐き出してしまった。
気持ち良すぎて体に力が入らず、ソファに体を預けたまま目を閉じた。
肩で息を吐いていると、上からテンゾウに抱きしめられた。
優しくてあたたかくて、愛おしい。その背中を抱きしめる。

俺だけ気持ち良くしてもらったけど、俺もテンゾウのをしてあげた方がいいのかな。
してやりたい。上手くできるかわからないけど、なんとかなるだろう。

「今日はゆっくり休んでください。疲れてるのにこんな事してすみませんでした」

それなのにテンゾウはそんな事を言う。
テンゾウは我慢できるのかと思ったら、何故かショックを受けてしまった。

「テンゾウは・・・?お前だって」
「僕は平気ですから」
「平気って言われてもね・・・俺だけしてもらって、悪い」
「いいんです。僕は先輩が好きだから何でもできるんです」

俺だってそれぐらい出来ると思う。
だけど頑なに言われたら何も言えなかった。テンゾウの事を俺は好きなのかもしれないけれど、
今言う事は躊躇ってしまった。
好きかも知れないなんていう曖昧な返事なんか、聞きたくないはず。

「・・・わかった。じゃあ、その代わり一緒に寝よう」
「一緒にですか?それはキツイですね」
「一緒に寝てくれないのなら帰る。そもそも一緒にいて欲しいって言ったのは、お前のほうでしょ」
「いやでも、だからって一緒に寝なくたって・・・僕だって我慢できなくなりそうです」
「・・・それでも別にいいと思ってるよ」

自分から誘うような事を言ってしまい恥ずかしくなってしまった。
だけど、そう思っているのは本当。遠慮とかしてほしくない。

「わかりました。ベッドに行きましょう」

耳元で溜め息混じりの声で言われて体が熱くなった。
その言葉に頷いて、テンゾウと一緒にベッドの中に潜り込んだ。
テンゾウは緊張した様子で、じっと固まったまま動かない。
そんなんじゃ眠れないだろうと抱きしめたら、驚きでテンゾウの体が小さく震えた。

「・・・あのさ。言っておくけど誰とでもすぐ寝るような男じゃないからね」

テンゾウは俺が好意を持っている事には全然気付いていないようだから
誤解をされないように言ったのだけど、テンゾウはそれを聞いて笑った。

「何笑ってるのよ」
「いえ。でも先輩の反応見てたら分かります。こういう事、意外に慣れてないんだなぁって。
だからさっきは断ったんです」
「慣れてなくて悪かったね。・・・だって面倒でしょ、セックスって。付き合うのも面倒だと思ってる」
「ハッキリ言われちゃうと辛いですね」
「あ・・・ごめん。そういうつもりじゃ無かった」
「いいんです。僕の事は気にしないで下さい」

そう言ってテンゾウは、俺の背中に腕を回して優しく寝かしつけるように撫でてくれた。
俺は確かにこういう事には全然慣れていないけど、テンゾウはむしろ慣れてる方なんじゃないのかって思えてきた。
いくら好きだと言ってくれてるとはいえ、簡単に男にキスをしたり口淫したりできるものなんだろうか。
いや、する事は出来るのかもしれない。俺だって、されて平気だった訳なんだから。
そうじゃなくて引っかかったのは、あっという間にイかされてしまったこと。
こういう事、他の人ともした事あるのだろうか。

「・・・わがまま言ってごめんね。眠れそう?」
「ええ、まぁ大丈夫だと思います。でも朝まで起きてて、こうやって先輩の寝てる所を見ていたい」

テンゾウはそう言って、俺の髪に触れる。
指で髪を梳かれるのが心地よくて、目を閉じてテンゾウの首筋に顔を埋めた。
テンゾウの脈がとても早くて自分の脈も、合わせるように早くなってしまう。

「今日はテンゾウも任務明けで疲れてるんだから、寝たほうがいい」
「せっかく先輩がこんなに近くにいてくれているのにって思ったら、眠れないです」

そう言ってテンゾウは苦笑いをする。

「そんなの・・・これから、いつだって見たらいいと思う」
「先輩。それってどういう意味ですか」
「・・・そういう意味。嫌じゃないとか、そういう事じゃなくてテンゾウと一緒にいたいって思ってる。
今日だけじゃなくて。多分・・・俺もお前が好きだよ。じゃなきゃ、こんなにドキドキしたりしない」

緊張で声が震えないように気を付けながら、そう言えば肩を引き離されて顔を覗き込まれる。
その真剣な表情に、心臓が壊れそうな程弾む。
何か言われるのかと目を逸らさず見つめ返していたら、そのまま肩を押されて組み敷かれた。
驚いてテンゾウの顔を見上げたら、心の底から嬉しそうな顔をしてテンゾウが微笑む。

「本当ですか?嬉しいです、先輩。どうしよう・・・キスしてもいいですか」
「いいよ」

そう答えれば、ゆっくりと顔が近づいて優しく唇が重ねられた。
何度も啄むように重ねられる度に、テンゾウの気持ちが伝わってきて胸が甘く疼いて呼吸を乱される。