in the flight





あめ玉 27








「嫌いになったとか、そうじゃなくて、むしろ進行形で好きっていうか。
だから、少し距離があった方がいいかもしれないって思った」

本当は言いたくなかったし、言うつもりもなかった。
テンゾウに甘えていたくなかったから、冷たくしてしまっていた事なんて話してしまったら、
きっとテンゾウは甘えてもいいって言うような気がしたから。

「僕は逆だと思っていました。どんどん先輩が離れて行くような気がして。
・・・先輩、さっきのもう一度言ってくれませんか」
「さっきのって?」
「進行形で好きって。すごく嬉しかったです」
「そんなの一回言えば充分・・・っ」

自分が言った事を思い出して体中が熱くなってしまった。
テンゾウの熱が移ってしまったんじゃないかと思うくらい。
ふと気がつけば、腰に硬くなったテンゾウのものが当たっていた。
ひどい熱があるのに、どうしてこんなに元気なんだろう。

「・・・あのさテンゾウ。熱あるからね、今日は大人しく・・・」

宥めるように言えば、服の裾からテンゾウの手が潜り込んで背中を撫でる。
熱い手が動く度に息が乱れそうになるのを、必死で押さえ込む。

「分かってます。先輩に移す訳にはいきませんから。でも、本当は今すぐしたくて仕方ないんです」
「・・・そんなの俺だって」
「分かってます。・・・嬉しいです」

テンゾウはそう言って俺の下半身に腰を擦りつける。
長いこと触れられていないせいで、ほんの少しの刺激だけで体が震えてしまう。

「さっきの薬、睡眠薬も入ってるから・・・もうそろそろ眠くなってくると思う」

そうなってくれるのが一番いいのだけど。こうやって何もせずに抱き合っているのはお互い辛いだけで、
それならいっそ、してしまった方がいいんじゃないのかなんて思ってしまう。
だけど睡眠薬が効いて、中途半端で終わってしまうのは嫌だ。

「今にも寝ちゃいそうです。・・・先輩、明日なんですが」
「任務はさすがに無理でしょ」
「はい。任務報告の時にもう熱があったので。下がるまでは休みます」
「わかった。・・・明日は早く帰ってこれるから」
「ここにいてもいいんですか?誰か訪ねてきたりしたら」
「いい。いいから、その代わり早く治して。心配だから」

テンゾウが熱を出すなんて滅多にない事だから落ち着かなくて。
その原因も俺のせいかもしれないと思ったら、気が気じゃない。

「・・・先輩、今すぐ抱いていいですか。
僕もう何がなんだか分からないですが、先輩が欲しくて堪らないんです」

耳元に熱っぽい声で言われたら体が熱くなってしまって
思わず頷いてしまいそうになったけど、慌てて首を横に振る。

「だ、駄目・・・!熱あるのに、駄目に決まってるでしょ・・・!」
「・・・駄目ですか」

落ち込んだような声でテンゾウは言って俺の髪に顔を埋めた。
俺だって今すぐしたいと思うけど、やっぱりそんな訳にはいかない。

「熱があるから、そんな事思うんでしょ」
「それは関係ないです。先輩に触れているのに、そう思わない訳ないじゃないですか」

段々と眠たそうな声になってきた。睡眠薬が効いてきたのだろうか。

「治ったら、ね。体なんか繋げなくったって、ずっと一緒にいるから」
「・・・はい」
「心配しなくたって、俺はお前が好きだよ」

好きになりすぎて困る位好きだから、自分がテンゾウの事を嫌いになる事はないと思う。
こんなふうに誰かを好きになった事なんか一度もなかったから、余計に。
だから逆に、テンゾウに嫌われた時の事を考えたら怖くなってしまう。ずっと一緒にいてほしい。

「先輩・・・」
「おやすみ」


       *


結局、眠れずに朝を迎えてしまった。カーテンから差し込む朝日が目に滲みる。
テンゾウの体温も、随分と下がったみたいだった。
今日一日休めば明日から任務に出られるだろうな。
まだ少し早いけれど朝食を用意しておいてやろうと、ベッドからそっと出ようとすると
引き止めるようにテンゾウの腕が腰に絡みついた。
起きていたのかと驚いて振り返ると、寝息は立てたままで起きている様子は無い。
手を伸ばして頭を撫でてやると満足したように、するりと腕が解かれる。
子供みたい。
ぐっすり眠っている事を確認して、額にキスをしてから台所に向かった。
テンゾウの為にお粥を炊いている間に自分の支度を済ませる。
顔を洗い終えて部屋に戻ろうとしたら、目の前にテンゾウが立っていたから思い切り驚いてしまった。

「わっ・・・、起きてたんなら声ぐらいかけてよ」
「すみません。任務の準備もあるかと思って、終わるまで待っていようと・・・」
「じゃ、いつから起きてたの」
「多分・・・先輩がベッドから出る前ですね。キス嬉しかったです。寝たふりしててよかった」

そう言ってテンゾウは嬉しそうに笑う。
「最っ低」
少しでも眠ってるテンゾウをかわいいとか思った俺が馬鹿だった。
恥ずかしいにも程がある。キスなんかするんじゃなかった。

「俺もう任務に行くから、後は勝手に好きに・・・っ」

早くこの場から立ち去りたいとテンゾウの横を通り過ぎようとしたら、
手首を掴まれて引き止められてしまった。
それからすぐに後ろから抱きしめられてしまう。
テンゾウの唇が耳たぶに触れて、思わず体が震えてしまった。

「任務まで時間はまだありますよね。だからまだ行かないで下さい。
先輩もしかして・・・僕の勘違いかもしれないんですけど、恥ずかしいんですか?
キスしてくれて本当に嬉しかったんです。寝たふりしてたのは悪かったですけど」
「・・・恥ずかしい。当たり前でしょ」

素直にそう言えばぎゅっと強く抱きしめられる。

「だったらすごく嬉しいです。普通は恥ずかしくなくなってくるものじゃないですか。
・・・先輩がずっと僕を避けてた理由も、なんとなく分かりました」
「ぁ・・・っ、ん・・・・」

テンゾウに耳たぶを舐められて、体から力が抜けそうになった。
もう随分とテンゾウと抱き合っていない上に、昨晩はお預けをくらったせいで
少しの刺激だけで体がぐずぐずに溶けてしまいそうだった。

せっかく着替えた服を、あっという間にテンゾウに脱がされてしまう。
体中を滑るテンゾウの手の感触が気持ちいい。

「ん・・・駄目だって、時間そんなに無い」
「大丈夫です。僕もゆっくりしている余裕ないんで」
「それに、熱だって」
「先輩のおかげで熱はもう引きました。でも、こっちの熱は収まりそうにないです」

そう言ってテンゾウは俺の手を掴んで、下半身に導く。
下着越しに触れたテンゾウのものはすでにドクドクと脈を打って、
今にもはち切れてしまいそうな程に硬く膨張していた。