in the flight





あめ玉 28








「・・・すごい」
「先輩のだって、人の事言えないですよ」

思わず口に出してしまうと、からかうように言い返されてしまった。

「テンゾウのせいでしょ」
「・・・じゃあ責任持って、なんとかします」

なんとかって何って聞こうと思う前に、テンゾウが床に膝をついたから
何をしようとしているのか分かって恥ずかしくなってしまった。
舌で先端の窪みを舐められ咥えられると身体が震えてしまう。

「・・・ん・・・っ」

テンゾウの口内は熱くて、すごく気持ち良い。
わざとらしく音を立てながら唇を動かすテンゾウを見れば目が合った。
久しぶりに見たテンゾウの欲情した顔に、体が甘く痺れる。
視線の先で揺れる茶色の髪の毛に手を潜らせて目を閉じた。

「っ・・・気持ちいい」

テンゾウの手が後ろに伸びて硬く閉じている窄まりに触れた。
ひんやりとした液体を塗りつけられ思わず目を開くと足下に潤滑剤が置いてあった。
ベッド脇の引き出しの奥に入れてあったものだけど、いつの間に用意してきたんだろう。
入り口の皺を撫でていた指がぬるりと簡単に体内に入ってきて、たまらずテンゾウの髪を強く掴んだ。
指を出し入れされただけで立っているのが辛くなってしまい、後ずさりして後ろの壁にもたれた。

「ん・・・、は・・・っあ・・・」

指をもう一本増やされて、入り口を広げるように肉壁を擦られると目の前がくらくらしてしまう。
久しぶりなのにいきなり前も後ろもなんて、刺激が強すぎて頭がどうにかなりそうだ。

「テンゾ・・・イキたい・・・っ」

我慢ができずそう言えば、奥まで咥えられ射精を促すように動かされて目の前が真っ白になった。
テンゾウの口内に出してしまいそうになって慌てて引き抜こうとしたけれど間に合わくて。
ごくりと飲み終えたテンゾウが立ち上がって、苦笑いをした。

「もう少しで顔にかかる所でした」
「・・・ごめん。久しぶりだったから濃いし、量多いし、悪いと思って」
「そのほうが、僕は嬉しいです」

テンゾウはそう言いながら俺を後ろに向かせる。
立ったままでなんかほとんどした事が無い上に、明るいし久しぶりだからベッドに行きたいと思ったけれど
俺だって余裕なんか無くて。後ろで服を脱ぐ音を聞きながら壁に手をついて、腰を突き出した。
その腰を両手で掴まれ後ろの入り口にぬるぬるした先端を押しつけられると緊張で体が堅くなってしまう。

「痛かったら言ってください」
「いいから早く」

テンゾウはそんなつもり無いと思うけれど焦らされているように感じてそう言えば、
熱い塊がぬるりと押し込まれた。

「・・・っ」
「・・・あ、あぁ・・・っ」

塗りつけられた潤滑剤のおかげで抵抗なく入ってくるのだけど、
それでも充分に慣らされていないせいで強く締め付けてしまっている。
緩めようとしても、どうしても繋がった部分を意識してしまって上手く力が抜けない。
どうするのかと思っていたら、そのまま一気に奥まで押し込められた。
そして息を付くまもなく何度も腰を打ち付けられて体が震える。

「待っ・・・」
「待てないです」

膝が震えるのを必死でこらえる。内壁を抉るように擦られて、体の奥が熱く疼く。
泣きたくなるような快感を感じながら、テンゾウにされるがまま喘ぐ事しかできない。
いつの間にか自分のものが熱を持ち始めていたのも、テンゾウに触れられてから気付いた。
こんなふうに性急に求められた事が無かったから戸惑いながらも
中を慣らされていない分いつもよりテンゾウのものが大きく感じて、気持ちいい。
テンゾウの手が射精を促すように動くせいで、またイキたくなってしまう。

「テンゾ・・・俺もう・・・ッ」
「はい」

前を強く握られ、数回擦られただけで目の前が真っ白になってしまい、
テンゾウの手の中に射精してしまった。
そして何度か強く腰を打ち付けられた後、腰にどろりとした熱い液体がかけられた。
自分の声で気付かなかったけれど、いつになくテンゾウの息が乱れている。
よく考えたらテンゾウは病み上がりだ。
大丈夫なのかと思い、体を起こして振り返ろうとするとテンゾウに止められた。

「先輩、そのまま動かないで下さい。拭くものを取ってきます」
「あ・・・そっか」

腰を突き出したまま一人にされるのは恥ずかしいけれど
言われた通りに待っていたらすぐに戻ってきて、きれいに拭いてくれた。
だけどシャワーを浴びてからじゃないと出れないな。鼻が利くやつ多いし。
今から任務かと思ったら気が進まない。
本当はこのままベッドに行って、もう一度じっくり抱き合いたい。

「すみません・・・強引にこんな事してしまって」

振り返ってテンゾウを見ると気まずそうな顔をしていたから、その頭を軽く小突いた。

「馬鹿。謝るような事じゃないでしょ」
「時間大丈夫ですか。何時からって僕、聞いてなかったんで」

テンゾウに言われて時計を見れば、集合時刻を1時間も過ぎていた。
いつも遅れて行く癖が付いているせいで、何も無かったとしても遅れていたのだけど。

「あー・・・ちょっとさすがに不味いかな。シャワーだけ浴びていく」
「え・・・っ、シャワーなんか浴びて大丈夫なんですか。時間厳守でしょう」
「だーいじょうぶだって。お前の匂いを付けたまま任務行く方が良くないでしょ。あいつらも年頃だしな」
「・・・確かに、そうかも知れないです」

やっと納得したような顔でテンゾウは頷いたから、俺は急いで浴室に入った。
テンゾウの顔を見ていたら、本当に家から出たくなくなってしまいそうだった。
まだ体中が火照っていてシャワーを浴びた所で収まりそうにもないけれど、急いで行かないと。
体だけ洗って浴室から出れば、テンゾウが台所から出てきて嬉しそうな顔で笑う。

「朝食、ありがとうございます」
「病人なんだからね、一応。それ食べたらベッドで休むように」
「わかりました」

病み上がりなのに大丈夫なのかって、少し心配していたけれど
様子を見る限りすっかり良くなっているみたいだった。
服を着て玄関に向かうと、テンゾウも一緒に付いてきた。
見送りをしてもらうなんて気恥ずかしいけれど、なんだか嬉しかった。

「じゃ、行ってくる」
「早く帰ってきて下さいね」

振り返ってそう言えば、不意を突かれ目の下に唇が押し当てられた。

「気を付けて。待ってますから」
「・・・ん。行ってきます」

テンゾウにキスされたせいで自分でもびっくりする位に顔が熱くなり、
逃げるように家を飛び出した。それでなくても体は火照ったままなのに。
待ち合わせ場所に向かいながらも、今朝の事ばかり考えてしまう。
こんな事になる位なら、つまらない意地なんか張らなければ良かった。
誤解もお互いに解けたのは良いけれど、任務でのすれ違いはやっぱり仕方が無いから
これからどうするか今日帰ったら話そうと思う。
一緒に暮らすのは無理な話だから、やっぱり俺がテンゾウの家に行くのが一番良いのかもしれない。








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