in the flight





あめ玉 30








気が付いたら暖かいベッドの中にいた。
あれから何度も求め合って、そのまま眠ってしまったみたいだった。
隣にはテンゾウがいないけれど、体中にテンゾウの感触とか匂いとか温かさがまだ残っている事に顔が熱くなってしまう。
気怠い体を起こして暗い部屋の中を見回してみると、浴室のドアの隙間から灯りが見えたからホッとした。
明日も任務だと言っていたし準備もあるだろうから、もしかして帰ってしまったかと思ったんだけど。

時計を見ると夜中の1時が過ぎている。
朝じゃなくて良かったけれど帰ってきたのが夕方だったから、かなりの時間眠っていた事になるかもしれない。

喉が少し痛むし、水が飲みたい。
みっともない声はテンゾウに聞かれたくないから抑えるようにしているんだけど、
結局いつも我慢できない。
よろりと起き上がって台所に行ってから、夕飯の事を思い出した。
せっかくテンゾウが作って待っていてくれたのに食べずじまいで、テンゾウも食べていないみたいだった。
勿体ないことしてしまったな。また明日食べればいいけれどテンゾウお腹空いてなかったのかな。

水を飲んで一息ついているとテンゾウが風呂から上がってきた。

「すみません。起こしちゃいましたね」
「いや。全然気付かなかった」

俺がそう言うとホッとしたような顔をする。髪が濡れて色っぽい。
だけどテンゾウは病み上がりなんだから、ちゃんと乾かしたほうがいい。

「ドライヤー使う?」
「大丈夫ですよ、すぐに乾きますし。先輩も風呂入ってきて下さい」
「ん、明日も朝から任務だしね。それよりお腹減ってないの?ご飯食べてない」
「今日は一日ゆっくりしていたせいで、お腹は減ってないんです。・・・今から食べますか?」
「いや、いい。せっかく作ってくれたのにごめんね。明日食べよう」
「はい。なるべく早く帰ってきます」

テンゾウはそう言ってにっこりと笑った。
昨日から会っているというのに、なんかやっぱり照れくさい。
テンゾウがいるだけでドキドキしてしまう。

「風呂入ってくる。先に寝ててもいいよ」
「待ってます。先に寝るなんて勿体ない事できませんよ」
「・・・そんな事言って先に寝てたら怒るからね」

俺はそう言って急いで風呂に入った。
面と向かってあんな事言われたら恥ずかしくて仕方がない。
熱いシャワーを浴びて体を洗う。ふと自分の体を見下ろしてみると
胸や脇腹に赤い痕があちらこちらに付いているのに気付き、顔が真っ赤になってしまった。
頭が真っ白だったせいで、いつ付けられたのかも全く覚えていない。恥ずかしい。

急いで風呂から出て、ソファに座っていたテンゾウに文句を言おうと思ったのだけど
その前にテンゾウに抱きしめられてしまった。

「・・・何」
「いえ、先輩がいると思ったら嬉しくてつい」

その言葉が嬉しくて俺も同じだと思ったけれど、そんな事言えない。

「意味分かんない事言わないでよ」
「照れてます?」
「照れてない・・・!」

そうは言ったって、口調やら心音でテンゾウには見透かされているみたいで。
もういいと諦めて大人しく背中に腕を回すと、髪を優しく撫でられた。

「さっきは無理させてすみません。もうちょっと抑えるようにしないと、夕飯一緒に食べれないですよね」
「・・・抑えなくていい。夕飯食べれないのは困るけど」
「先輩・・・」
「もうすれ違ったりするの嫌だから。俺も思った事はなるべく伝えるようにする」

できるか分からないけれど、そうした方が絶対に良いって気付いたから。

「分かりました。では先輩に無理させない程度にしますね。難しいですけど・・・」
「お前ね・・・」
「なんですか?」
「もういい、寝る。あ、ベッド狭いからテンゾウはソファね」

そう言ってテンゾウから離れてベッドに潜り込んだ。

「え〜!先輩ひどいです」

もの凄く不満そうな顔をしているテンゾウが可愛くて茶化したくなってしまう。

「明日ちゃんと起こしてね。朝ご飯もよろしく」
「先輩、そんな事言ってたら僕何するか分かりませんよ?」
「はいはい。じゃ、おやすみ」

そう言って目を閉じたらすぐにモゾモゾとテンゾウがベッドに入り込んできた。
暖かい腕に抱きしめられる。

「おやすみなさい」

耳元で優しく囁かれてドキドキしてしまった。
こんな事でドキドキしてしまうんだから、心臓がいくつあっても足りない気がする。
愛しい腕の重みを感じながら幸せな気分で、もう一度眠りについた。








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