in the flight





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   カカシ

 「あ、なんか意外」
 「そうですか?」
 「うん。自分で建てた家に住んでるのかと思ってた」

 テンゾウの家に初めて行った。そう。いつも野宿する時に立派な家を建ててくれるから、テンゾウの住んでいる家も一軒家だとばかり、勝手に思っていた。
 「一人ですし、家にいる時間も少ないですから」
 「まぁ、そうだよね」
 俺だってそうだ。
 もう少し広い家に住んでもいいのだろうけど、任務で忙しくてあまり家にいる事が少ないから狭い部屋で暮らしている。
 「ちょっと埃っぽいかもしれませんが、どうぞ」と通された家の中は、すっきりと片付いていて、テンゾウらしい部屋だった。沢山の観葉植物が置かれている。
 きょろきょろしている俺をよそに、テンゾウはバタバタと忙しい。
 「気は遣わなくていいからね。任務の後で、テンゾウも疲れてるでしょ」
 「ありがとうございます。・・・そこ、座って待ってて頂けますか?」
 と、テンゾウが指を差したのは深緑色のソファ。
 座り心地はすごく良さそうで、はーい。と返事をして、そこに体を沈めると、微かにテンゾウの匂いがした。
 いつもここで、本とか読んでるのかなぁと、ソファに寝転ぶフリをしてクンクンと匂いを嗅いでしまった。これじゃまるで変質者みたいだと思いながらも、嬉しくてやめられない。

 テンゾウは部屋を行ったり来たりしてばかりで、お湯の流れる音や水の音、コンロに火をつける音が忙しなく聞こえている。
 やっぱり外に食べに行ったほうが良かったかな、これじゃあテンゾウも休めない。
 「ねえ。テンゾウも、ちょっと座ったら?」
 と、今は台所にいるテンゾウに声を掛けたら、お盆の上にお茶を二つ乗せてちょうどこっちに来るところだった。目が合うと、にっこりと笑う。
 「ええ、そうしようかと」
 そう言ってお盆を机の上に置いて、俺の隣に座った。ふかふかのソファが、テンゾウの重みで揺れてドキドキする。
 「ごめーんね。テンゾウも疲れてるのに」
 「平気ですよ。今、風呂に湯を入れてるんで溜ったら入って下さいね。その間に、ご飯作っておきますから」
 そう言ってテンゾウは微笑む。
 こんな風に優しく言われたら頷くしかできない。なんでだろう。テンゾウは後輩なのに、甘えたくなってしまうのはテンゾウの事が好きだからっていう理由だけなんかじゃないと思う。
 一緒にいると安心するっていうか。顔を見ただけでホッとしてしまうんだ。
 「何か手伝う事あったら言ってね」
 「もう大体の準備は済ませました。それに、僕に作れって言ったのは先輩でしょう?」
 「あぁ、まあそうなんだけど・・・」
 「嫌だったら断りますよ、僕だって。だから今日は、遠慮しないでゆっくりして下さい」
 ニコニコと笑いながら、いつになく優しく話すテンゾウにドキッとしてしまう。
 「さ、そろそろ風呂も入ってますよ。着替えも用意してますから」と、立ち上がったテンゾウに浴室を案内してもらった。
 汚れた服を脱いで浴室に入り、頭からシャワーを被り埃を洗い流す。それから湯の中に入ると、温度もちょうどよくて気持ちいい。
 冷えた体が温まり、うっかり寝てしまいそうになって慌てて風呂から上がった。
 置いてくれていた着替えはパジャマで、これってテンゾウのだよね?とか考えたら、またドキドキしてしまって顔が熱くなった。





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